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恩方とモフモフ
【一度家に帰ろう】
セクセラムが目を覚まして数日経ったアルの屋敷に悲鳴が響いた。

「大丈夫!大丈夫だ!一人で食べれる!やっ止めてくれ!」

爛々と瞳を輝かせたメイド達に揉みくちゃにされているのはセクセラムだった。

ベッドに横たわるセクセラムに次々と食べやすいように細かく切られた美味しそうな食べ物が運ばれてくる。セクセラムはまるで子供に対するように差し出される食事に悲鳴を上げて嫌がる。

しつこく食事を差し出してきたメイド達は、とうとう怒鳴ったセクセラムにシュンと落ち込んで猫耳を伏せた。

「もっ申し訳ありません。」
「私達、少しでも【恩方】のお役にたちたくて…。」
「でも、ご迷惑でございましたか?」
「シクシク。」

フワフワの縦ロールの可愛いらしいメイド達に涙目で上目使いに見上げられて、グッと言葉を詰まらせるセクセラム。

数分後

「はい【恩方】様、あーん。」
「こちらも美味しいですよ?」
「イスリム湾で採れた貝のムニエルです。自信作なんですよ!」
「あん!こちらも食べて下さい☆」

アル達がセクセラムの部屋に入ると、豪華なベッドの上でメイド達に挟まれて悟った瞳で黙々と食べている魔術師の姿があった。

「何だこのハーレムは…?」

その光景を見てアルがポツリと呟いた。

屋敷で一番豪華な部屋にて、いつもより丈の短いメイド服を纏った美少女達に纏わり付かれて食事をする魔術師の姿は正にハーレム。

中の一人は明らかにセクセラムの背中に胸を押し付けている。

「くぉらぁ!サーシャ、ミーシャ、ルール。【恩方】に何してるんだ!離れろ!今すぐ直ちに直ぐさま速攻で【恩方】の御身体から離れろぉぉ!」
「ふーん、嫌なこったですわ。グラドさんは引っ込んで下さいませ!」
「そうですわ!私どもは使用人長様にお世話係を命じられたのですから。」
「変態さんなグラドさんには任せられませんもんね?」
「「「ねー!」」」

四人の様子を見て青筋を立てて怒り出したグラドに、メイド達は勝ち誇ったようにセクセラムの意外と逞しい胸板に抱き着いてコロコロと笑い合った。

「ムキー!貸せ!俺がお食事の手伝いをする。」

激昂したグラドが毛を逆立ててベッドの上に襲い掛かかった。

「キャァ!変態が襲い掛かって来ましたわ!」
「怖いですぅ。」
「二人ともしっかり!力を合わせて【恩方】をお守りするのです!」
「「はい!」」

怯える二人を叱咤するルールに力強く頷いたサーシャとミーシャは何処からか取り出した調理機具を手にグラドを迎え撃った。

「糞!ちょこざいな!」
「ミーシャ足押さえて足!」
「キャーお胸を触られましたわ!」
「どさくさに紛れて何してるのですか!」
「最低ー。」
「わざとじゃ無い!ギャーそこは止めろ!」
「乙女の怒り!」
「縛っちゃえ☆」
「えいえい!」
「そこ!まだ動いてますわよ!」

目の前で少女達にゴキブリのように叩かれているグラドを無視してセクセラムの横に座ったアルは魔術師の顔を覗いた。

魔術師は慣れたような顔をして使用人達の争いを眺めていた。彼がアルに魔法を見せた後に怒涛のようになだれ込んで来た使用人達は、競って彼の世話を焼きたがり何度も使用人同士でガチンコバトルを繰り広げていたからだ。

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