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恩方とモフモフ
2
彼等が案内されたのは大きな木造の建物だった。

古い歴史を感じさせる三階建てのそこは巨大な博物館だ。

博物館にある巨大な応接室に入った一同を迎えたのは、豪華な衣装に身を包み何人もの猫人に傅かれた優男だった。

優男は皮張りのソファーに寝転びながら入室してきたリューテス達を見て形の良い眉を跳ね上げた。

「フム、やっと王宮より迎えが来たか。我を待たせるとは無礼なことよな。」

傲慢に言い放ちリューテス達を見下ろす男を見てリューテスは面倒臭そうに見返した。

「寛ぎの所申し訳ないが、ここは学院所属の博物館でこの部屋は関係者以外立入禁止だ。退出してくれ。」
「何を言うか無礼者!!」「まあ良い。お主は我が誰か分かって喋っておるのか?たかが騎士と一緒に使いに出されるような身分の貴族が喋れるような存在じゃないのだぞ。」

怒りを露にした側近を下がらせた男はリューテスを馬鹿にしたように笑った。それを笑顔で受けたリューテスは背後の騎士に指示を出す。

「はーい、不敬罪成立。しょっぴけー。」
「なっ何をする!我は【恩方】ぞ!」
「おー【恩方】を騙ったぞキール。これは重罪だな…。」
「そうですね。」

側近達と共に騎士達に拘束される男は悲鳴を上げながらリューテスに文句を言う。それを嘲笑ってリューテスは男に対面する。

「おいお前!自分が何をしているか分かっているのか!我はこの国の守護者であり偉大なる【恩方】ぞ!」
「ふ、俺は偉大なる【王子様】だぞ。」
「なっまさかリューテス王子!?」
「ピンポーン。お前、王家に無断で【恩方】名乗ってなにしてくれちゃってるわけ?」
「わっ我は【恩方】だ。王家の者なら尚更、相応の礼儀を払わぬか!?」
「うるせーよ仕掛け使って耳を隠しているくせにウダウダ言ってんじゃねーよ!」

騎士に拘束されている男に近付いたリューテスはその頭に着けられている豪奢な髪飾りを毟り取った。髪飾りには鬘が付いていて、隠されていた男の猫耳がピョコンと飛び出た。

それを見た側近達が驚愕の声を上げた。

「なっ!?あんた人間じゃないのか!?良くも騙したな!」

正体を暴かれた【偽恩方】は開き直ったようにふてぶてしく側近を見返した。

「ふん!騙される方が悪いんだよ馬鹿共が。」
「ふざけるな!金返せ!」
「だーれが返すか!もう使っちまったよ!」

ギャーギャー騒ぐ彼等を目の前にして、ウンザリと溜息をつくリューテス。脇で苦笑している騎士に指示を出す。

「あーもう煩い、連れていってくれ。」
「はっ!」
「離せー!」

騎士に連れ去られる【偽恩方】が不様に引きずられているのを見送っていると、それを眺めるシングが目に入った。

「折角ご協力頂いたのに申し訳ありませんシング殿。御恥ずかしい所をお見せ致しました。」
「構わん……っ!」

リューテスに応えていたシングが突然顔を跳ね上げて中を睨み付ける。

「シング殿…?」


【何だよふざけないでよね!馬鹿にして腹立つ腹立つ腹立つ!】

何処からともなく幼い少年の甲高い声が響いてきた。ヒステリックに叫んでいる声は何かに怒り狂っている。

「な…何だこれ…。」

リューテスの戸惑いに構わずに声は言葉を続けて行く。

【マジで腹立つ!もう良いや帰ってケーキでも食べよ!でも…、おいお前!】
「ひい!わっ私?」
【僕を騙すなんて良い根性だね!クスクスそれじゃあご褒美をあげるよ〜。】

【偽恩方】にそう告げた声は嘲るような笑い声の尾を引きながら消えていった。

突然現れた声に呆然としていた猫人達とは違い、狼達は直ぐさま体をたわめて戦闘体勢に入っていた。

「全員抜刀!」
「何をしているのですかシング殿!?」
「アイシャの王子よ、気をつけろ。敵が来るぞ!」

いきなり室内で抜刀した狼達に反射的に騎士達も剣を抜いた。シングに対して非難の声を上げるリューテスに冷静な声で応えたシングは耳を逆立てて歯を剥き出しにした。

リューテスがシングのその様子に困惑する中、それは現れた。

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