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恩方とモフモフ
3
しんみりした空気が部屋を満たす中、それを破るようにアルがパンパンと手を叩いた。

「それではセクセラム殿、理解はしてもらったか?本題に入るぞ。」
「うっわ!?アル様!敬語敬語。」
「そんなのどうでもいいだろう、この方は五百年前の人物だ。僕自身が助けられた訳ではないし、敬意は払うが頭を下げないといけない義理はない。」
「そんなぁ・・・。」
「いや、いいよ。レン達も私にはタメ口だったからな、気にしないしそちらの方が気軽で良い。グラド君も私にはそんなに改まらなくても良い、セクセラムと呼んでくれ。」

というか君にもっと普通にして欲しい・・・。

そういう願いを込めてセクセラムは執事の青年を見上げて言った。その言葉を聞いて停止したグラドは暫くモジモジすると、気合を込めてセクセラムの名を呼ぼうとした。

「名前を覚えて頂いて光栄です!そそそ…それでは、セ…セ…セク…ブホ!」
「うおおお!?」

真剣な顔のまま、ブシャーと派手に鼻血を出してグラドは倒れてしまった。ベッドの上で驚いてのけ反ったセクセラムの横でアルがヤレヤレとため息を付いた。

「何度目だグラド?もう輸血用の血液は残っていないぞ?」
「何度もやってるのかこの子は!?」
「ああそうだ、貴方が来てからな。毎回チラリズム万歳とか珍妙な事を叫びながら鼻血を噴出しているぞ。あまり気にしないでくれ、貴方が膝枕でもすれば一分で直る。」
「分かった!」
「へ?」

ベッドに腰掛けて適当に呟くアルに予想外に真剣な声が返ってきた。

驚いたアルが見みると、セクセラムは床に降りると床に倒れていたグラドをベッドの上にテキパキと乗せる。彼は再びベッドの上に戻ると胡坐をかいた自分の膝の中にグラドの頭を置いた。

読者の皆さんは先程のグラドの興奮振りで分かるだろうが、【恩方】が大好きなグラドがそんなことを【恩方】自身にやられたら・・・。

グラドは恍惚の顔で呟いた。

「人生に一片も悔い無し…。」
「ギャー。」
「死んだな…。」

半端ない流血
暫くして…。

「お前のせいで時間を無駄にしたぞ!」
「セクセラム様直々に手当して頂くなんて身にあまる光栄です。感動のあまり体が弾けそうです!」
「聞いてないだと!?」

セクセラムに治療されて回復したグラドは脇でギャンギャン文句を言う主を無視して、ウットリと魔術師を見つめていた。恍惚に耳と尻尾をハリネズミのように逆立てて憧れの存在を見つめていたグラドは、思いっきりアルにどつかれた。

「さて、本題に戻ろうセクセラム殿。貴方は噂に聞く魔法を操ることができるのか?」

股間を押さえて悶える執事に凍りのような一瞥をやると、改めてセクセラムに向き合うアルは先程までとは違う明らかにワクワクとした光を瞳に宿らせていた。その子供らしい声にセクセラムは表情を崩した。

「あぁ、そうだ私はそれが仕事道具だからな。」
「本当か!それでは是非、僕に魔法を見せてくれないか!!なっ何か必要な物があれば直ぐに用意させるぞ!」

ナァナァと鳴きながら、ベッドに腰掛けるセクセラムの膝に手を付いてねだるアルの可愛いらしさにデレッとセクセラムは表情を崩す。

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あきゅろす。
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