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恩方とモフモフ
3
それを静かに狼達は見届けていた。

彼等の傍らには馬はいなかった。強靭な肉体を持つ彼等には馬なぞ邪魔なだけ。

シングはスッと一瞬部下達を見た。その中に右腕を押さえて息を荒くする青年を見とめる。

「時間はないか…。」

小さく呟いたシングの声は鋭い狼の耳にも届かなかった。

狼達は猫達に気付かれないように密に捜索を続けていたが、すでに三日経った。ヤンに残された時間は長くない…。

「走れ。」

是と狼達が応えるのも待たずにシング王はその逞しい足で大地を蹴っていた。

まるで一迅の風のように灰色の影がアイシャの地を駆けて行く。


後にリューテスはこの時の自分の判断が正しかったと心の底から思った。

何故ならこの後、屈強なアイシャの騎士団でさえ打ちのめされる狂気に満ちた敵が彼等に襲い掛かるからだった。

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