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恩方とモフモフ
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「カール!また用も無いのに王樹様に近付いて。修業はどうしたんだ、もうすぐ五百年目の【救世の夜】なんだ。気を引きしめろ。」

今日もまた、兄らしき人物が少年に怒った。こちらも少年に良く似た美青年だ。

髪を短く刈った少年とは違い、新緑色の髪を伸ばして一つに纏めた姿は、まるで女性のように美しい。

精悍や男らしいという言葉とは無縁の、優美や優雅という言葉がピッタリな青年である。

兄を振り向いたカール君は可愛い眉を上げて睨んだ。

「煩い!修業なんて馬鹿馬鹿しいのできるかよ!」
「愚か者が!しっかりと修業に努めなければ、立派な【森番】になぞなれぬぞ。」
「ふん!誰が【森番】みたいなダセーのになるかよ!」
「何を言うか!」

カール君の言葉に眉を吊り上げて怒りを露にするお兄ちゃん。

反抗期に良くある親への反抗からの、敷かれたレールに乗りたくないという奴かな?

「父さまや母さまも、こんなデカイだけの木に本気で仕えて馬鹿みてー。こんなん只の木じゃん。」
「愚弟が!口を慎まぬか!」
「もっと馬鹿なのは兄さまだ。こんな木の為にケイオス兄さんを捨てるなんて!」

突然のカール君の言葉にお兄ちゃんは、ぐっと言葉を詰まらせた。それを見て更に言葉を重ねるカール君。

「本当は兄さまも思っている筈だ。こんな木なんて、王樹なんてなければ良かったって!」
「カール!」
「フン!こんな物なんて!」
「止めろ!」

カール君は駆けると、王樹の幹を思いっきり蹴った。樹皮が飛び散る。

「カール!」

パシン

我に返ったお兄ちゃんは慌てて引き離すと、カール君の頬を叩いた。

「…っ!兄様の馬鹿。」

カール君は叩かれた頬を叩くと、泣きながら走り去ってしまった。

「くっ!」

一方、叩いた方のお兄ちゃんは、叩いた自分の腕を辛そうな顔で見ると、自分自身の顔を思いっきり殴った。外見の割に意外と体育会系だな、お兄ちゃん。

お兄ちゃんは先程カール君が蹴った事を王樹に平身低頭で王樹に詫びると、去って行った。

しかし、カール君。
王樹を蹴るなんて凄いな。私は恐れ多くて出来ない。

私は王樹が怒ってないか聞いてみたら、何が?と言わんばかりの返答がきた。

そう言えば、王樹はとてもおおらかな性格だったな。五百年前も、鹿に角でゴリゴリ削られても気にしてなかったし…。

しかし、激しくあの兄弟に何があったのか気になる。何だかお兄ちゃんに男の影が伺える。

ちなみに、この世界では同性愛は珍しくない。獣人達は良くも悪くも欲望に忠実でロマンチックな所があるので、愛があれば性別なんて関係ないという者が多いからだ。

ん?何だい王樹?

呼ばれた気がして振り返ると歌をねだられた。

大丈夫だ王樹。
ここから出ても、私は生き絶えるまで貴方といる。
たとえ、それが樹である貴方にとって一瞬の間でも、私と貴方の間の契約は失われない。

だから安心してくれ。
偉大なる王樹よ。

黄金色の偉大な意志に語りかけると、王樹は微笑みを返してくれた。

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あきゅろす。
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