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恩方とモフモフ
【王樹の中】魔術師編
王樹に抱かれて眠る日々は酷く心地良かった。

光輝く葉に体を包まれ、数本の交際した枝に体を支えられ、王樹の子守唄が常に私を満たしていた。私は失った日々を夢に見て涙を流したが、それ以外は穏やかな日々。

時折、王樹に応えて歌を披露する以外は、私は王樹に深い眠りを与えられていた。


穏やかだった日々は五百年が近づき、意識が覚醒し始めた事で終わりを告げた。

はっきりと覚醒した以後、私は王樹を通して外を見た。

王樹の外には穏やかな森が広がっていた。

観察してみると、毎日数人の猫人が王樹に会いに来ていた。

どうやら王樹は彼等の信仰の対象になっているらしい。これほどまでに力が強い存在は稀だ、信仰の対象になっても可笑しくない。


ある者は王樹の根元で国家安泰を願い、ある者は歌を朗々と歌っていた。

彼等は平和な日々を送っているようだった。

良かった。

その時に初めて、私はあの時の封印が成功した事を理解して安堵した。

王樹との契約の以後、その代償に時間を捧げて眠りについた私は、何度か意識だけ外に出た事はあった。しかし、その時の私は半覚醒状態で王樹の一部となっていた為、ハッキリ意識を保ってはいない状態だった。
多分もう大分前に死んだであろう皆の事を思って少し涙がでる。

そして、あの子の事も。
泣いて怯えていたあの子、ケガレた体の浄化は進んでいるだろうか。

起きたら一度会いに行こうと思う。可愛いあの子に…、ウヘヘヘヘヘ。

イカンイカン、ついヨダレが…。

いつの間にか垂れてきたヨダレを服の裾で拭くと、取り合えず私は外の猫人達の観察を再開した。

五百年も経っているのに、あまり生活は変わっていないようだった。

服装も私が居た頃とあまり変わっていない。

どうやら彼等は【森番】という王樹を守る一族らしい。私は彼等の会話に耳を澄まし、言葉を覚える。

猫人達の言語は変わっていなかったが、五百年も経つと大分様変わりしていた為だ。

意味は分かったから学習するのはそう難しくはなかったが、微妙に言葉のニュアンスが変わっていたりして骨が折れた。

暫く【森番】達を見ていると、私には楽しみが出来た。

【森番】は基本的に男性ばかりなのだが、その中に美少年が一人居たためだ。

めちゃくちゃ可愛い。

強気な瞳はダークブルー。眉は意志の強さを表すように凛々しくあがるマロ眉で、逞しく日焼けした体は動きやすい服装に包まれている。

半ズボンって良いね…。

少年は反抗期らしく、何度か兄らしき人物と誰もいない時に王樹の下で言い争いをしていた。

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