[携帯モード] [URL送信]

恩方とモフモフ
3
リューテスが見つめる先、王樹がたわんだ。

王樹から突如、光の枝葉が猛烈な勢いで生えた。

枝葉は互いに絡み合いながら急速に成長し、遥か彼方の天に向かって伸びて光の柱となる。

それは目が眩むような光を発し、首都中の住人がそれを目にした。

リューテスは見た。
頭上の光の柱の先から、ユックリと人が現れるのを…。

光葉に視界を遮られながら、リューテスは目を凝らす。

その人物はポタリと涙を流し、眼下の彼等を見て微笑んだ。風に人物が持つ杖に結ばれた布がはためく。

「まさか…!」

リューテスがその姿の意味に気付いて目を開いた瞬間、パリンと美しい音を響かせて光の柱が弾けた。

光が爆発し、まるで流れ星のように首都中に光のカケラが落ちる。パリン、シャランとまるで楽曲のような光が地面に叩き付けられて弾ける音が響いた。

「くうっ!」

咄嗟に目をつぶったリューテスが再び視線を戻すと、あの人物はいなかった。

風が止み光が収まると、人々が立ち上がり始めた。

「【恩方】…?」
「【恩方】だ。」
「目覚められた!」
「オオォ!」

歓声が人々から上がる。しかし、立ち上がったリューテスが見た先には、顔を青ざめさせたキールがいた。

「騎士団よ!即刻捜索隊を結成せよ!町中に落ちた光のカケラを探せ!」

リューテスはその場に居た将校達に片手を上げて指示を下した。

傍らではクロムドも【傷の戦士団】の面々に指示を下している。

将校に命じながら会場を出ようとしたリューテスは、フト後ろを振り向いた。

森番が頭を下げて祈りを捧げている王樹は、先程の事が嘘のように、いつも通りに静かに佇んでいた。


静かな王樹の姿は、何故かリューテスの心をざわめかす。
何かが再び始まった。
そう直感が告げていた。

この時ばかりは、王樹が不気味に思えて、リューテスは視線を王樹から反らし、会場を後にした。

[*前へ][次へ#]

13/15ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!