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恩方とモフモフ
【救世の夜】
王樹の近くに開設された復活祭の会場は、パーティー会場とは違い神妙な雰囲気が満ちていた。

威厳に満ちた王樹の周りには純白の紐が張り巡らされ、そこには色とりどりの布が巻き付けられて風にたなびいていた。

貴族の親子が王樹に布を捧げていた。娘を肩車をから降ろした父親はリボンを付けた頭を笑い合ながら撫でた。

王夫婦と直接の家臣達は静かに祈りを捧げていた。

リューテスは会場入口に佇む森番に挨拶をして入ると、セオボルドの一団は会場の隅に佇んでいた。

暫く眺めていたが、一団は何のアクションもせずに立っているだけだ。

面白くないと口を尖らせていると、キールが肘でつっついてきた。

「何だよ?…げっ!」

振り向くと、キールの後ろから睨み付けてくる両親や家臣の皆さん。

『こっちに来て祈りなさい馬鹿息子。』

と静かにアイシャ国王の瞳は語っていた。

「早く行って下さい。もうすぐ【救世の夜】ですよ!」
「くっそーギリギリまで外に居れば良かった。」
「馬鹿な事言わないで下さい!」
「へいへい。」

渋々とキールと別れてアイシャ国王夫婦の後ろに作られた席に着くリューテス。そこには他にも二人の青年達がいた。

「よっ!久しぶり。」
「遅い…。」

赤髪の青年と白い髪の青年が小声でリューテスに話しかけた。

赤髪の髭を生やした金色の瞳の青年の名はクロムド。イルの直系の子孫であり、【傷の戦士団】の団員である。

白髪の青い垂れ目の青年の名はセトラス。セトラの直系の子孫であり、【王国医師団】の医者だ。

復活祭の晩に王宮では、代々【三王侯】の直系の男子が布を捧げる儀式が行われる。

男子は基本的に始祖と同じ髪と瞳の色の者が選ばれる。

「ったく、さっさと終わってもらいたいぜ。」
「まぁ、そんな事言うんじゃねーよリューテス。終ったらレディー達と楽しくやろうぜ。」
「煩い。黙れ。」

愚痴る二人をサファイアのような水色の垂れ目で睨むセトラス。

凝った編み目の錦の糸に飾られた美しい青い布が、その手に握られていた。繊細編み目が美しい絹の青い布は、銀糸が編み込まれているらしくキラキラと光っている。

「リューテス。しっかりと布は持って来たか?以前のように忘れたとは言わせないぞ。」

捧げる布は基本的に男子本人が用意するのが決まりだ。

「…やべ。」
「またかよ!?何回目だ!」
「クロムドはどうなんだ。」
「ヘヘーン俺は持って来たぜ!」

そう言って得意げにクロムドが出したのは、無骨な赤銅色の布だった。

「あーもう、これで良い!」

いきなり屈み込んだリューテスは、自分の服の中に手を突っ込んだ。
何かを破く音がした。

「ふー。良かった用意できた。」

王子の正装の下からズルズルと黒い布を出して安心したかのように呟くリューテス。

「お前!それ着てるシャツだろ。」
「大丈〜夫!黒いし〜。」
「ふざけるな…。」

笑うクロムドの後ろでゴゴゴと黒いオーラを出しながらセトラスがリューテスを睨み付ける。

っと、その時美しい鐘の音が首都中から響き渡った。
【救世の夜】が始まったのだ。

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あきゅろす。
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