恩方とモフモフ
3
「そう言えばアルはいつ来るんだ?」
シリアスな雰囲気を吹き飛ばして、ウキウキとした雰囲気でキールを振り返った。
そのリューテスの姿にため息をついてキールは頭に手を当てた。
「今晩は祭りに参加しないって。」
「えー何でだよ?アルはいつもこの祭りを楽しみにしてただろ?」
「君がアルにキスなんてするからだよ?あれ以来拗ねちゃって屋敷からも出てこないんだから。」
「仕方ねーだろ?だってアルは可愛いんだからよ?いやー、久しぶりに会ってビビッタぜ?なんたって物凄い美人に成長してるんだからな。十三歳であれなら今後が益々期待できるわ。」
「アルは病気なんだから止めてくれよ、まぁ君のおかげでじっとしてくれてるから、都合は良いけどね。」
そこでリューテスは眉を潜めた。
「まだ直ってねーのかあの病気。」
「うん。最近発作が頻繁になっているんだ。相変わらず王都からは出られない。神木の葉を身につけていると治まるんだけどね?そう何度も貰えないし・・・。」
「俺も虎の国で調べたけど、全く分からなかった。すまんな。」
「良いよ。君のおかげで色々な薬が手に入っているんだから。」
「そういえば、調べているうちにアルによく似た症状が書かれた本があったんだ。」
「何それ!?」
リューテスは言葉に反応するキールを片手で落ち着かせて話しを続ける。
「治療法とかは一切かかれていない信憑性が薄い物だが、内容に問題があってな。それは災禍の時代のことに書かれた本だったんだ。」
「災禍について!?」
災禍について書かれた物は殆どない。その後の戦乱のせいで失われた。また、当時は文字が普及してなかったことも原因の一つである。
「ああ、虎は武勇に誇りをかけている。だから負けた災禍と言う事について後継者に伝えずにはいられなかったんだろうな。王宮に一冊だけ本が保存されていた。そこに書かれた中で災禍に身を侵された者の症状がそっくりだったんだ。」
ソノモノ
モガキクルシミ
シンノゾウガトマリ
ゼンンシンガクロクソマリ
ゼンゴフカクトナリ
イギョウトカス
「まさか・・。」
「はっ。そんな顔するんじゃねーよ。【災禍】なんてただの伝説だ伝説。本当だとしても5百年前にいなくなった奴だぜ?今頃アルが侵されるわけねーだろ?」
安心しろと呟くリューテスだったが、キールは胸のざわめきを抑えることは出来なかった。
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