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恩方とモフモフ
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かってこの大陸全土に災厄を振り撒いたといわれている狼たちは、不吉な獣人として他の種族から忌み嫌われている。

彼らは荒野に追いやられ、傭兵業や強靭な肉体を生かした猛獣狩りなどの危険な仕事をすることで生計を立てている。今では狼の国セオボルドは軍事国家として力を増しているが、不吉の獣という烙印は残ったままだ。

猫人の国アルシャと狼の国セオボルドとの関係は長年微妙な均衡を保っている。なにせ、片方は大陸を守った聖人を擁する国。片方は大陸を災いに導いた者たちの国なのだ。しかし、意外なことにセオボルトと唯一公平に交流をしていると言っても良い国はアルシャだ。

昔、【恩方】が眠りについた後には狼に復讐しようとした者は猫人の中にも多く居た。

しかし、【恩方】自身の許せとの言葉が復讐の刃を止めた。

それ以後、猫人は狼の国と苦々しく思いながらも表面上は正常に交流を続け、国難の際には手助けもした。そんな関係が続く中、猫人の中には優越感に浸って狼を見下し、はっきりといえば下等とすら思って差別している者も多い。

そのような者達の一見したら分からない言動は狼たちには差別として伝わった。

建国以来五百年。一見すると両者は平穏な関係を築きながら、猫人は狼を見下し、狼は猫人に反感を持つという関係が続いている。

「一体何の為に今宵の祭りに参加するんだろう?」
「さぁね?贖罪の為か、はたまた復讐か?あいつらにとっては今の立場は【恩方】のせいって言えねえこともないからな?」
「それは無いだろうね。」
「まぁな。そんなことなんかしたら、今度こそ狼は大陸中の国々から袋叩きにあっちまう。只でさえ恨みは計って売るほど買ってるのに。」

まぁ、今日の晩が楽しみだな・・・。

猫人の王子はそろそろ出てくる月を山の向こうに感じながら呟いた。

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