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短編小説
2
意外とチャンスは早く来た

ダクルス様の命を狙った刺客を俺が捕らえたのだ。しかも、きちんと殺さずに無力化できた…。

俺はダクルス様の執務室に呼ばれて、盛大なお褒めの言葉を頂いた。リック様も喜んでくださり、自慢げにされていた。

申し訳ない…。

ダクルス様は褒美をやろうと言って下さった。

待っていた…。

俺はこの日の為に予め書いておいた嘆願書を渡した。読んだダクルス様の顔が引き攣る。

「…。何故君はこんな事を望む?君は自由なんだぞ。」

聞かれた言葉にメモ帳に返事を書く。

【私はセイ様の犬です。一生変わりません。私はあの方の為なら何でもします。】

俺はその場で土下座する。頭上から冷えた声が降ってくる。

「成る程…、これだけの恩を受けながらセイに相変わらず忠誠を誓うというのか?」
「ちょ…何が!?」

ダクルス様がリック様に嘆願書を渡す。読んだリック様が悲鳴をあげる。

「セイ様を自由にするだって!?テオ、お前何を言ってんだよ!」
「……。」
「ダクルス様、コイツは悪くないんです。まだセイ様のせいで混乱しているだけなんです!」
「そのようには見えないが…。」

ダクルスを見上げるテオの瞳には濁りはない。彼を見下ろしたダクルスは言い放った。

「セイを出すことは出来ない。弟自身それを望んでいない。」
【褒美を頂くまでどきません】
「勝手にすれば良い。だが、邪魔になるから庭に移動しろ。」

俺は庭に移動すると、執務室から見える場所に座ると、再び地面に顔を擦り付けた。

こんな事をした俺は完璧に不評を買った。褒美を貰える可能性は限りなく低いだろう。でも、馬鹿な俺にはこんな事しか出来ない。

大丈夫。
奴隷だった俺にはこんな事は何にもない。不眠不休で土下座し続ける位、軽すぎて朝飯前だ。

ただ一つ申し訳ないのが、親しくなった庭師の邪魔になる事だった。

【三日後】

今日も暑い
日が焼け付ける
風呂に入ってないから匂うな…。

俺が土下座していると、日が陰った。庭師の娘だ。

「ねえ、セイ様ってそんなに大切なの?」
頷く
「へ〜アンタがそこまでするなんて、イロイロ問題が有るみたいだけど良い人なのね?」
そっそこは頷けない
人の体に歌いながら針をぶっ刺す人物だ。子供や娘には近付けてはいけない人物ワーストスリーに入るだろう。

「まぁ頑張ってね。」

そう言った庭師の娘は仕事に戻っていった。

「あれ〜お父さん。私、急に此処に木を植えたくなった〜。」
「おぉ〜、何だかお父さんも同じ気分だよ〜。」

庭師親子…、木を植えて日陰を作ってくれるのは嬉しいが、砂埃が大変なことになっている。鼻が…はなが〜!

【執務室】

「申し訳ございません。」
「何故謝るのだリック。」
「私の監督不届きの為にご不快な思いを…。」
「良い。私もあの者の忠誠を見抜けなかったのだから。しかし…、あの愚か者に此処まで愚直に忠誠を誓う者がいたとはな…。あの屋敷に居た他の者は、罵りしか言わなかったのに。」
「ダクルス様…。」
「父の愚行を消し去ると言いながら、私もセイを館に閉じ込めている。」
「それはセイ様が自ら閉じこもっているからです!」
「そう、私には哀れな弟を館から自由には出来ない。奴は求めていない。ならば自らを進んで犬という、あの男ならば…。」

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