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短編小説
【裏】
あれから私は見つめていた。

恐怖と嫌悪に塗れていない視線で見つめると、沢山の事が分かる。

まずは私が一日中いるベッド。

今更ながら分かるが、肌触りから最高級な物だ。最初は麻だと記憶しているが、いつの間にか変わったらしい。

私が気付いてから更に生地の質がワンランク上がった…。

しかも、これ一枚だけじゃない。毎回の性交の後にシーツを変えられている為、少なくとも二枚以上はあるだろう。

……金は幾ら掛かってるんだ?

私の四肢を拘束している拘束具。それは無骨な鉄と丈夫な革で出来ているが、私が傷付かないように、非常に柔らかい布が内側に縫い付けられている。

両手を手の前に捧げて見つめる。鎖がジャラリと音がした。

革の手錠が嵌まっている手首を見てみると、ベルトと金属が付いているソレの内側には、布があり中には綿が入っているのか肌触りが非常に良い。

手首はガッチリ固定されながらも、動かしてみても痛くない。

確か、これも最初はこんな物ではなかったと思う。無機質な金属で、手首が派手に切れて肉がえぐれたと記憶している。

いつのまにか変わったのか?

何よりも驚いたのが着せられたドレスだ。絹はシーツよりも上質な絹が惜し気もなく使われ、同布で作られた造花に飾られている硝子のビーズ。よくよく見てみたら…これ…ダイヤモンドじゃないか?

ふと、顔の前に移動させた手を見た。すると、そこには、ダイヤモンドの指輪が薬指に嵌まっていた。

「……」

その大きさに一瞬硬直する。

もしやと…、体を起こして見てみると、私の体には沢山のアクセサリーが飾られている。

サファイアやルビー分不相応な宝石が足首や首に飾られてキラキラ光っている。さりげないデザインで、今まで気にならかったが、とんでもない金額だ。

……金は幾ら掛かってるんだ?

あと目が向くのは機械だ。遠隔操作や独自の装置は精巧につきる。

脱走しようとしていた時は、その頑健なシステムに絶望したが、今はただ感心する。

一つ一つが無駄な機構を省き、性能を上げる工夫を施されている。美しいとさえ言える装置だ。

出される食事。

これも手間隙かけられて作られている。初めて味わって食べた時は驚いた。

それを思い出しながら、私はベールを手にして頬に擦りつける。

そのままベールの艶やかな触感を感じながらベッドの上に横たわった。ジャラジャラと鎖の音を響かせながら、私はベッドの上に横たわる。

ベールで顔を隠しながら目を閉じて息を吐いた。

自分がどんなに大切にされているか理解するにつれて、罪悪感が生まれてくる。キリキリキリキリ胸が締め付けられて苦しい。

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