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短編小説

「なあ、ウ゛ィクトールこれで何度目だろうな?」

何度目かの夢の中、友人の一人が呟いた。私は必死に彼に縋り付き哀願する。

「もう…止めてくれ」

これ以上見せないでくれ。これ以上見せられたら私は…私は。

「止めない、俺達の義務でもあるんだ」
「さあ見ろ…奴を見ろ」

また夢が始まる。

その中の怪物は豪華な屋敷の中にいた。絢爛豪華な内装から見るに、どうやら貴族の屋敷のようだ。鮮やかな布が張られた椅子に座るのは怪物だ。

巨躯にフードを纏う奴の前には男が窓枠にもたれ掛かって居た。上質なスーツに身を包んだ男はまるで大輪の華のような美貌の男だ。

男は美貌に似つかわしくないニヤニヤとした笑いを浮かべながら何かリストを見ている。

見終わった男は満足そうな顔をして怪物を見た。

「相変わらずの見事な物だね。君のおかげで僕の事業は大分儲かっている。しかし、こんな事なんてしなくて良いんだよ?君達が存在するだけで僕は満足なんだからね」
「そういう訳にはいかない。……貰いっぱなしは好かん」

ぶっきらぼうは奴の言葉に男は女のようにクスクスと笑う。

「君は過剰な程、義理堅いよねぇ…」
「…」
「友情の証として受け取るよ。だがしかし、何故花嫁をあの男にしたんだい?自分で作れるんだし、もっと美しい者にすれば良かったのに…。そうだ、今も遅くない。奴を殺せば良いよ、今まで君が奴から受けた苦痛を全て味合わせて復讐させてやれ」

身を乗り出して怪物を見上げるように囁く男。瞬きもせずに赤い唇を動かす男はまるで悪魔のようだ。

「意味がない…」
「?」
「アイツじゃないと意味がない。花嫁も自分で作っても意味がない」

それを聞いた男は毒気が抜かれたような顔をした。

「ふぅ…、君は本当に一途だね?あんなゲスな男は殺した方がマシだと思うのだが」
「……」
「ゴメンゴメン。謝るから睨まないでくれよ」

そこで光景は終わった。

私は困惑して眉をひそめた。先程奴らが話していた内容が理解できない。何故、私にそこまで執着する?

復讐か?
復讐なのか?

「まだ分からないのか…」

懐かしい声に振り向けば、そこには友人が呆れた様子で佇んでいた。

友人が私を指差す。

「怪物はお前が欲しいんだよ。だって奴は自分で作れるんだぞ花嫁を、それをワザワザお前を花嫁にするなんてそういう事さ。奴を愛してやれよ、お前はソロソロ責任をとらないといけねーよ」

責任!?
私は責任を果たす為に奴を!

「止めろ…分かってんだろ?そろそろ諦めろ無駄な足掻きを止めろ」

何故私を責めるんだ…。止めてくれ、私が奴にどんな事をされているか知っているのか!?これ以上辛い思いをさせないでくれ。

「責めてない。これは俺達の罪でもあるんだ」
「知っていながら俺達はお前を止めなかった」
「一緒に奴を傷付けた」
「刃をもって」
「言葉で」
「銃で」
「罠で」

「「「「子供を傷付けた」」」」

違う!違う違う違う違う!アイツは子供じゃない!化け物だ!

「止めなよ兄ちゃん…。でないと僕達のようになるよ」

あ…あ…ああ…。

皆の体が崩れる。辺り一面に腐った肉が焼ける凄まじい臭いが広がった。

鎖を体に巻いたその姿は…、罰を受ける亡者。

顔の肉がゴッソリとこそげ、腐り落ちた体の隙間から青白い炎がチロチロと覗いて体の内側から苦しめられているのが分かる。

「こうなるよ兄さん」
「こうなるぞ」

諦めろ
認めろ

囁くような声が響く。

私は絶叫して叫ぶ。

出てけ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ

汚らわしい姿を見せるな!叫んだ瞬間、皆はいなくなった…。

最後に浮かんだ映像…。それは苛烈な性交によって気絶した私に縋り付き、涙を流して「父さん」と語りかける化け物の姿だった。

叫ぶ
叫ぶ

心から否定する。理解しそうになる頭を振って思考を止める。

その映像は役割を終えると消えてしまった。

訪れたのは漆黒。何もない中、私はたった一人でいた…。もう何も起こらないし誰もいない。まるで、あとは自分で考えろと言うかのように。

肩をガックリ落とすと、うずくまる。

嗚呼…、分かったさ。
分かっていたさ。

私は怪物を作り出し、思い通りの外見じゃなかったという理由で処分しようとした。作ったのは私なのに…無責任にも怪物を捨てたんだ。

心ある生命を…。

そして、私を求めた奴を煩わしく思い嫌悪感にて殺そうとした。奴のたった一つの願すら叶えずに…。

分かっていた…責任は誰にあるのかなんて。

しかし、頑なな私は奴が悪いと責任転換して命を狙った。怪物を殺して責任から逃げようとしたんだ。

そして、怪物は人を殺すようになった。

分かっていた…分かっていたんだ!

誰が悪いなんて
誰の責任かなんて







悪いのは…私

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