短編小説 貴方は逃げる 【怪物Side】 俺は毎日あそこに行く。アイツが居る部屋。覗き窓から息を殺して眠るアイツを見る。 そしてアイツが居る事を確認した後、何度もドアに故障はないか点検する。 やっと手に入れた俺の花嫁。逃がさない絶対逃がさない。 もう孤独は嫌だ。 例え会話が出来なくても、居るだけで良い。好き勝手に体を蹂躙して、俺の匂いを何度も体に擦り込む。 体を繋げ終わった後に、ムワリと香る匂いを嗅ぐと充実感が満ちてくる。 それと同時に、痙攣して怯えて見つめてくるアイツの顔に唇を噛む。憔悴しきる体は冷たく強張り俺を拒絶する。 体を動かせば悲鳴をあげ、苦痛で震えると分かっている。だけど止めれない。 アイツの体はギリギリ締まり、俺を拒絶する。敏感な部分を容赦なく締め上げられると痛いし、悲痛な悲鳴には耳を塞ぎたくなる。 快楽なんて感じない。あるのは、ほの暗い独占欲が満たされる快感だけ。 白濁をなんとか搾り出すと、中に擦り付ける。嫌悪感にブルリと震える眼下の体に泣きたくなる。 意識朦朧としたアイツは、動かない。 視線は俺を通り過ぎる。 アイツは俺を見ない。 俺を認めない。 体中に痣を作り、痛みに体力を消耗しているアイツに枷を着ける。痛々しい跡が残っている足首、首に大きな枷を着けると、ベッドの上に縛り付ける。 俺は部屋を出るとアイツに注射する薬品を用意する。地下室に監禁して、動けないくらい痛め付け、枷で拘束し、薬で眠らす。 異常なのは知っている。だけどアイツは賢いから、油断すると直ぐに逃げてしまう。やっと手に入れたのに、逃がすなんてしない。 アイツは俺の物だ。 だけど…、俺はアノ写真を見る。仲間と笑うアイツが居た。 俺は…、俺は…。 ドウン 壁を殴ると轟音がして、パラパラと埃が落ちてきた。 涙が滴る。 [*前へ][次へ#] [戻る] |