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短編小説
3
「お待ち下さい陛下!私も同行します。」

部屋の隅に控えていた若い騎士が前に出て陛下に膝をづく。

「夜間に魔法使い殿のみに殿下の護衛を頼まれるには、些か物騒ではないかと…。」
「おお、ギュンター頼まれてくれるか。」

嬉しそうな王に「はいっ!」と張りのある声で元気良く応じる青年は、王国騎士団一の剣の使い手で名前はギュンターと言う。

藤色の勝ち気な瞳に栗色の髪を無造作に流し、逞しい体を鎧に身を包んでいる。何処か猫科の獣を想像させる勝ち気な顔立ちは、女性が放っておかないだろう。

「さぁ、マクシミリアン様コチラヘ。」

彼は立ち上がって私の横に立つと、殿下を私の腕から受け取ろうとした。

私としては願ったり叶ったりだったのですが…。

「…!!!(焦)」
「でっ殿下!?」

私の服から手を離せ糞ガキがぁ。
何故そこまで抵抗する!?
鍛えられた騎士に引っ張られても離さん気概は認めてやるが、他でやれ!
伸びる!伸びる!

何だ?イダダダダ!
テメェ、私の髪を思いっきり引っ張ってんじゃねぇ。

「オヤオヤァ?殿下は私の方がよろしいようですなぁ。騎士殿、殿下の事は私にお任せ下さいませ。」
「…(嬉)!」

あまりの抵抗に、私の身に被害が甚大になりそうだったので、非常に不本意ながら必死に引き離される事に抵抗していた殿下を騎士殿の手から取り上げます。

あぁ…、騎士殿の視線が痛い!
痛くて愉快愉快イヒヒヒ。

嬉しそうに私に抱き着いてくるマクシミリアン様を避けながら木枯らしのような声で笑うと、騎士殿は青筋を浮かべて睨み付けてくる。

実は私、彼に、というが騎士団の方々にかなり嫌われております。なにせ王陛下は昔騎士団長を勤めたこともある人物。兄上殿が亡くなり、急遽王位を継ぐことがなければ騎士達を率いておられましたでしょう。

だから騎士達が王陛下を慕うのは半端ないのですが、そりゃ敬愛する王が見るからに怪しい魔法使いを信頼していたら面白くないでしょう。

王陛下の息子であるマクシミリアン様が何故か騎士団の面々を怖がり懐かず、私にベッタリという所も反感に拍車をかけている。

まぁ、私もコイツらみたいな筋肉馬鹿達は好きではないですがぁ?

それに、このギュンターという騎士。
根が単純な為、私がからかうと直ぐ反応を返してくれて愉快愉快。毎回、私を不機嫌に睨み付けてくる騎士に少し気分が良くなります。

「それではそれでは行き間しょうか殿下?」
「…(嬉)!」

コクンと可愛いらしく頷かれたマクシミリアン様は私の手を引いて部屋を出て行きます。

テメェェ、高さが違うから手を引かれると腰がキツイんだよ。あと喋れ。

私の後ろを不機嫌さを丸出しにして、騎士殿がついて来られます。

あぁ!敬愛する王陛下の殿下と明かに不審者が何故という顔ですねぇ?

大丈夫、私も疑問です。
本当に、何故このガキはこんなに私に懐いているのでしょうか?

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