短編小説
1
日曜日の朝6時、平凡なアパートの一室には朝日が差し込み、早起きな小鳥達の爽やかな囀りが聞こえていた。
本が幾つも詰まれた雑多な雰囲気の部屋の中には一人の男が寝入っていた。平べったい煎餅布団にだらし無く寝そべっている男の名前伊東清孝。伊東は幸せそうにヨダレを垂らして夢の世界を旅行中だった。
暫くすると、グレーのパジャマを着た伊東はクシュンとくしゃみをしたが、起きる事なく再び枕の中に顔を埋めた。
そんな平和な休日の朝…。そこには穏やかな空気が広がっていた。
が…。
「お兄ちゃん起きて下さい!」
バーンと扉を乱暴に開け放ち、ブカブカのワイシャツを着た夕太が乱入してきた。
「ウオォォ!?」
突然の物音に跳ね起きた伊東に乗しかかる夕太。インドア派で力のない伊東は軽い夕太に乗しかかられて潰された。
「お兄ちゃん朝ですよ!今日は買物に行く約束です!」
「まだ…、6時じゃないか…。」
休日は、寝たい時に寝て起きたい時に起きる遅寝遅起派な伊東には、まだ早朝な時間帯だ。
「もう6時です!」
「休みなんだしさ…。」
「休みだからと言って、普段と違うリズムで生活をすると更に疲れちゃいますよ。さぁさぁ起きて支度して下さい!」
ジャッとカーテンを開けて朝日を室内に取り込む夕太。
「ギャー目が…目が〜。」
寝起きの瞳に直射日光を当てられて苦しみ悶える伊東。
仕事終わりの休日の朝にやられると、これはマジでキツイです。酒を飲んでたりしたら更にキツさアップです。
「早く起きないと、この部屋もお掃除しちゃいますよ?」
布団の中で蠢くだけで中々起きない伊東に夕太が最終勧告をする。昨晩家中を掃除した際に、安息の地である自室だけは自分で掃除するという条件で死守した伊東なのだった。
「分かった分かった!」
それは堪らないと起き上がった。
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