裏小説
2
「僕は先生の旦那様じゃん!だったら少しくらい良いでしょ!」
「レイン…何かあったのか?」
レインが涙目になっている事に気付いて、問い掛ける。レインは服の裾を握りながら思い詰めた様子で私を見上げてきた。
「僕…、まだ先生に好きって言われてない。」
「あぁ…。」
「先生、僕の事好き?」
私の服の裾を掴んで不安そうに見上げてくるレインの可愛いらしさに胸がキューンと締め付けられた。
ペタリと耳が垂れて尻尾を両足の間に挟みながら私の様子を伺うレインは、破壊的な可愛いらしさだ。
「当然だ、好きだ。」
「本当!?」
レインが私に抱き着いてくる。
「すまないなレイン。君は自分の気持ちを伝えてくれたのに、私は君を不安にさせた。」
「良いよ先生、許してあげる。」
「フフフ、ありがとうレイン。」
抱き合う二人の間に甘い雰囲気が漂う。自然に私達の間の距離が縮まる。
「ちょっと待ったぁぁぁ!」
甘い雰囲気は突然乱入してきた黒猫によって破られた。
「オッサン!レインから離れな!」
十代後半くらいの切れ長の目をした青年は、尻尾と耳を膨らませながらレインを私の手から引きはがした。
「何すんの!クラウ!」
「早まるなレイン。こんなオッサンの言うなりになる必要なんてないんだぞ!やいオッサン!レインに何してやがる。」
「嫌…何って…。」
「良い歳してレインに手を出すなんて恥ずかしくねーのかよオッサン。」
ウグッ
それを言われたら何も言えない…。嫌々、私は手を出したと言うより出された方…?
言われた事に悩んでいたら、バンッとレインが青年を突き飛ばした。
「止めてよクラウ!先生に失礼な事を言わないでよね!」
「ただのオッサンじゃねーか!レインには相応しくない。」
「僕の先生に失礼な事を言うな!」
バリバリバリ
レインを抱きしめようとした青年の顔にレインの爪が翻った。
「ウギャ〜。」
「コノコノコノ!」
「止めなさい。」
クラウと呼ばれた青年が倒れ込み、その上に乗ったレインが青年の顔を削り取る勢いで引っ掻いているのを止める。
二人とも念力で猫のように持ち上げる。
「で?何なんだ一体?この人は誰なんだ?」
腕を組んで吊り上げた二人を睨みつけると、レインは横にいたクラウを睨み付けた。
「隣村のクラウ…。」
「ふん!」
クラウは腕を組んで私を睨み続けている。
「お前がクラウの恋人だなんて認めないからな!」
「何でクラウに認められないといけないんだよ!」
「そ…それはどうでも良いじゃないか!」
おやおやまぁまぁ…。
頬を赤らめてそっぽを向いた青年に納得した。
レインは可愛くて綺麗だからな…。
「急に僕の家にやって来たと思ったら、先生に騙されてるとか訳分からない文句ばかり言ってきてマジ迷惑なんですけど!」
シャーとクラウを威嚇するレインにしどろもどろになるクラウ。彼等のジャレ合いは、私が切れて部屋から放り出すまで続いた。
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