裏小説
二プク
「おい糞ガキ。」
「ハヒイイ!!」
「……ハァ。夜も遅い、さっさと風呂に入れ。」
「分かりましたぁ!」
ガクガクプルプルと足を小鹿のように震わせながら風呂場に向かう花房。
「ワッ!」
「キャ〜!!」
何となく大声を上げてみたら、面白い位驚いて泣きながら走り去ってしまった。
あんなに怯えているのに、夕飯の時には腹一杯食べていたので意外と肝は太いと思う。
走り去る花房の背中を見詰めながらクックックッと笑いを漏らすヨゴレであった。
数分間
怯えながらも風呂はしっかりと堪能したらしく、ピカピカになってピンク色のパジャマを着た花房がイルカのぬいぐるみを持って佇んでいた。
彼の前には先程彼が座っていた大きなソファーがあった。今そこには、布団を被ったヨゴレが寝転びイライラと花房を睨み付けていた。
「さっさとしろや。俺は眠てーんだ。」
「ぼぼぼ僕、やっぱり床で寝ます!」
「何言ってやがる。自分の種族を自覚しやがれ。此処は珊瑚地帯とは違うんだ、鮫ならまだしも金魚のお前何か床で寝たりしたら凍え死ぬぞ。」
だからホラ。そう言ってヨゴレは布団をめくって入るように促す。
ヨゴレの家にはベッドなんて上等な物なぞない。体の丈夫な種族なので大体なんとかなるのだが、丈夫ではない金魚である花房は同じようにいかない。
しかも今は秋。
ヨゴレの家がある一帯は夜はかなり冷え込み、ヨゴレですら薄い布団が必要だ。花房など床で寝たら凍死だし、添い寝してやらないと風邪をひいてしまうだろう。
現に目の前の少年はカタカタと震えている。
「で…でも。」
モジモジと渋る花房に、元々気が短いヨゴレはドスの効いた声でキレた。
「入るか入らねーか、さっさと決めやがれ!」
「ハヒィィ!入ります!入らせて下さいませ〜!」
そう叫んで入り込んできた少年をイライラしながら腕に抱くと、さっさと寝ろと言わんばかりにヨゴレは明かりを消した。
暫くは腕の中の少年はブルブルとオモチャのように震えていたのだが、数分経つとスピスピ能天気な寝息を立てていた。
「やっぱりコイツ、意外と神経が図太いな…。おっと。」
しかも、花房は寝相が悪いらしく良く動く。ヨゴレは花房がベットから落ちないように胸元にしっかりと花房を抱きしめると、彼も眠りについた。
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