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裏小説
一プク
海のある魚人達の国。
国の一角にある淋しい岩礁地帯に、一軒の家があった。

その家の中に、一人の少年が怯えてプルプルとしていた。

彼の名前は花房。
金魚の魚人である。

幾重もの桃色が重なったフワフワの髪に薄いベールを被り、中華服のようなへそ出しノースリーブの服を着ている美しい少年だ。

彼は今、雑多に散らかった部屋の中で唯一無事なソファーの上で体操座りをしながら怯えていた。彼が怯える元凶は、そんな彼を見てチッと舌打ちしていた。

ビクン!

「ごめんなさいごめんなさい!食べないで〜。」
「食べねーって、何回言ったら分かるんだ糞ガキ。」

ソファーの上で猛烈に土下座し始めた少年を困惑したように見つめるのは柄の悪い青年だった。

目つきはかなり悪く、睨み付けるだけで瓶に穴とか開けそうです。軽くウェーブがかかった海藻のような黒髪の前髪は、ダラリと左目まで垂れていた。ヤンキーが好みそうな派手なシャツが目に痛い。

彼は180pはありそうな長身を床に横たえて雑誌を読んでいたのだが、少年の怯える音が煩わしく、顔を上げて少年を睨み付けた。

頭を抱えてさらに怯える少年に更に舌打ちをする青年。

彼の名前はヨゴレ。鮫の魚人である。

一見不釣り合いな二人だが、彼等が一緒にいるのには理由がある。

花房の両親でありヨゴレの友人でもある若夫婦達が世界一周旅行をクジで当ててしまったらしく、急に今朝訪れて花房をヨゴレに托すとさっさと行ってしまったのだ。

帰ってくるのは一年後だそうだ。

いくら友人の子供でも、見ず知らずの少年を押し付けられて困惑しているのに更に彼を悩ませることがあった。

少年はヨゴレを異常に怖がっているのだ。

まぁ、鮫という魚人種は元々、荒っぽい気性で協調性が少ない一匹狼タイプが多く只でさえ無意味に怯えられる。(昔、なんとなく河原に兄弟で集まって話していたら、「殺し合いが始まる!」と通報を受けた警官に捕まったこともある。)


それに加えてヨゴレの何でも噛み砕くギザギザの歯や細身の体につく鋼のような筋肉を纏った体は、小柄で見目好い事で評判な金魚の中で育った花房にとって恐ろしい物以外、何者でもなかった。

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