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★ただ願う、君の幸せを(アレニル)





#アレニル
(*注意としてロックオン×昔付き合ったことある女の、本当に掠る程度に軽いですが裏描写があり。少し女々しいニール傾向。)

















幸せってこういうことをいうのだろうかと、背後からロックオンを抱きながら、唐突に呟かれたアレルヤの言葉に、ロックオンはその表情を訝し気に歪ませた。

「なんだ、急に?」

 気だるげに寝そべる身体を反転させ、アレルヤと向き合う形にその身を落ち着けると、ロックオンは静かにそう問い掛けた。
 アレルヤは困ったような笑みを口元に浮かべる。、しかしそんな表情に反して、その指先は何も纏っていないロックオンの胸へと滑り落ちた。
 身体は正直なもので、僅かな動作にも反応してしまう自身にロックオンは羞恥に頬を染める。

「ロックオンと、こうしてる時間が幸せって言うのかなと思って。」
「・・あ、幸せ?」
「うん。」

 アレルヤはロックオンの返答に相槌をすると、向かい合ったロックオンの腰にその腕を回して抱き寄せる。ロックオンの口角は自然と上がり、彼に合わせるように肩に自身の腕を回した。じんわりと温かな体温を感じて、口許から息を漏らした。
 人の体温は心地良い。そう感じるのも相手がアレルヤだからこそだ。他の奴にはこんな風に安心して身体を預けられないだろう。自身と同じような、それなりに鍛えられた男と体温を分け合う程に密着させた経験など、眼の前にいる男以外には持ち合わせてはいないのだから比べようがないが、ロックオンにとってはその感覚が正直なものだった。
 昔、ソレスタルビーイングに入る前まで、この腕に女性を抱いたことは何度も経験が有る。男のそれとは比べようもない程に柔らかく、自身の腕にすっぽりと囲うことの出来る細い身体。記憶を手繰り寄せれば、ベットに広がる長い髪と、鼻孔を擽る甘い匂い、弾力のあるその感触がロックオンの悩内に生々しく過ぎり、何とも言いようのない気分に陥いる。
 確かに自身の下で甘い声をあげ、よがる彼女たちの身体はそれなりに気持ちが良かったし、男である自分は当然のように彼女たちの誘うようなその甘い身体に欲も湧いた。
 彼女たちをゆっくりとした動作で押し倒し、豊満なその胸元を舌先で辿った感触を今も覚えている。
けれどアレルヤはそんな彼女たちとも違う。男と女の身体の違いなわけであるから、違うと思うのは当然ではあるのだけれど、それとはまた別に明らかにロックオンの中でそれは違うものなのだと感じさせた。
 昔には感じ得なかった、激しい感情の揺れを確信していた。アレルヤの身体に触れ、体温を感じる度に、ロックオンは体の奥底から突き上げられるような衝動に駆られる。ガンダムによる戦闘の後やトレーニング後の肌にしっとりと汗をかいた男くさい匂いにゾクリと餓えた獣のような感覚をその身に享受してしまうことも少なくなかった。男に感じる筈のない、情欲に塗れた感情がそこには有った。

(可笑しいだろ。)

 思わずロックオンは笑みを零した。そんな自分が滑稽で、馬鹿だなとしか思えなかった。

「どうしたの?」
「いや・・」

 アレルヤは眉を僅かに下げ、困ったようにロックイオンに問い掛ける。そんな表情をさせるつもりはなっかったと、ロックオンは何でもないように返事をした。アレルヤは暫く真っ直ぐと自身を見つめてきたが、やがて諦めたように溜息をついた。

「僕は、ねロックオン。」
「ん?」
「今まで、幸せというものが・・いまいち解らなかったんだ。」

 ロックオンはアレルヤの言葉にその眉間に皺を寄せた。

「アレルヤ・・」
「・・解らなかった、けどねロックオン。思ったんだ。ロックオンと過ごしてる時間が僕にとっては幸せなものなんじゃないかって。」

(幸せ・・か。)

 それはアレルヤにとって、どんな感覚なのだろう。アレルヤは幸せというものが本当の意味でわかっているのだろうか。
 アレルヤは人革連の徴兵特務機関にてその幼少時代を過ごした。人そのものを形成する原点となる大切な時を、育っていくうちに自然と知っていく様々な感情を何も知ることなく、ただ戦いにおいて必要な知識だけを、感情だけをその身に受けてきた。そのような過去を本人の口から聞いていたからか、彼の言葉が余計に重たくロックオンには感じられた。ロックオンとて解っていなかったわけではない。初めてアレルヤと会って、彼と過ごしていくうちに、薄々だが幸せを感じ始めていたのも事実だった。
 個人情報の秘匿義務がソレスタルビーイングには有ったし、積極的に自分のことなど話そうともしなかった。ロックオンもその頃は、アレルヤの個人的な事情も、過去も知りもしなかった。知る必要もないと思っていた。けれど少なからずアレルヤとの交流があったため、昔からそういう感情の動きには敏感だったロックオンは、アレルヤの表情や動作ですぐにアレルヤが普通なら当然あるはずの感情が欠落していることを見抜いてしまった。だから、という訳ではない。
 その事に気づいてから、ロックオンはソレスタルビーイングの活動の時間の大半をアレルヤと過ごすようにしていた。今になって思えば、それはまるで親のような感情だったのかもしれない。アレルヤに色々なことを知って欲しかった。暖かい感情も、寂しいという感情も、様々な感情を自分のように知って欲しかったのだ。
 二年前に刹那がソレスタルビーイングに入って来てからは、アレルヤとは違った意味で、まだ幼い彼をロックオンは気にかけることが多くなった。
 それは年長者としての責任感と、元からの世話を焼く性分からだ。最近では殆どの時間をロックオンは刹那と行動を共にしていた。それもあってアレルヤとの時間は少なくなってしまったが、ロックオンはけっしてアレルヤとの時間を蔑ろにした訳ではない。彼と過ごす時間もロックオンにとってはとても大事な時間だったのだ。こんな風に、彼と非生産的な行為に浸っている時間も、アレルヤが自分に向かって、ロックオンとこうしている時間が幸せだと言う。アレルヤがニコリと嬉しそうに笑う。そんなアレルヤを思うと、ズキリとした痛みが胸に走った。

(どうすりゃいい)

 自分達はそんな甘い言葉を囁きあうような関係ではない。聞かなければ良かったと思う。幸せ、暖かい感情というものを確かにアレルヤにも知って欲しかったけれど、それを昔から願っていたけれど、それでもこんな形で知って欲しかった訳ではない。
 アレルヤは自分との間でそう感じるべきではなかった。自分ではない他の誰かと過ごす事で、幸せというものを知って欲しかった。
 全てアレルヤの為だと言ってしまえばひどく身勝手な感情だ。けれど自分では駄目だ。駄目なのだ。


ソレスタルビーイングという組織に入る時には、もう既にロックオンは決めていた。目的のためにこの手で人を殺した罪は、その報いは、必ず受けることを。だから自分との未来は望めない。この罪深き道を選んでしまった愚かな自分がそんな未来を望んではいけない。それなのに・・・

−ロックオンと、こうしてる時間が幸せって言うのかなと思って−

 そう思う反面、アレルヤの言葉に高揚したかのように、脈拍が波打つ。そんな自分がひどく嫌だった。
 
(駄目だ。駄目だろ。)

そんな感情は持ってはいけないと、自分にも言い聞かせるように、アレルヤを正そうとした。けれど言葉がうまく出てこなかった。唇が何か言葉にしようと開くが、言葉が音になる前に、閉じてしまう。その先を言うことが何故か出来なかった。
 以前ならば、はっきりとアレルヤに突き付けることが出来たと思う。けれど目の前の、この年下の男の言葉が、想いが、とても心地良く、失いたくないとも思ってしまう。胸の奥で何かが自分へ強く訴えるのだ。

「幸せだけど・・ね。ロックオン苦しいんだ。」
「アレルヤ?」
「自覚してしまったらこんなにも・・厄介な感情だったんだね。」

 アレルヤは自身から視線を逸らして俯く。気付くとロックオンは腕を上げ、アレルヤの頬を掌で掬うように撫でていた。自分でも何故そんな風にアレルヤに触れてしまったのかわからなかった。自然に身体が動いてしまった。どうして思いとは反対の行動をしてしまったのか、困るのは自分の癖に。
触れた指先に反応して、アレルヤの身体がはねる。ゆっくりと上げられたその表情は情けない程に頼りなく、ロックオンをその瞳に捕えるとくしゃりと顔が今にも泣きそうに歪んだ。

「好きです。」
「知ってる。」
「どうしうようもないくらい、ロックオンが好きだ。」
「解ってる。」

(あぁ、なんて顔しやがる。)

 苦悶を浮かべたアレルヤの表情が、切ない苦しいそんな想いをダイレクトに伝えてくる。その思いを受けとるわけにはいかない。ごまかしたかった。揺れるグレーの瞳を覗き込んで、ロックオンは安心させるようにアレルヤに微笑む。なんてずるい大人なんだろう、自分は。

「どうして。」
「ん?」
「どうしてそうやって・・」
「アレルヤ・・」

 ポタリとアレルヤの瞳から涙が落ちる。今の身体だけの関係は自分たちを縛る楔だ。年下の青年をこんな風に泣かせてしまって、身体の関係なんか結ぶんじゃなかったと、ロックオンは今になって後悔した。
 拒めば良かったんだ、あの時に。
こんな気持ちになるくらいなら、はっきりと言ってしまえば良かったんだ。
 何故自分は、アレルヤがその想いを自身へ口にした時に、拒んでやれなかったのだろう。
それは自身でもう解り切っている。
 自分が、アレルヤという暖かいものを手放したくなかったからだ。彼から向けられる好意を失ってしまうのが怖くて、彼の全てを拒否することが出来なかった。アレルヤの想いに応えてやる事が出来ないくせに、アレルヤへの応えは自分で解っている筈なのに、俺はアレルヤへそれを伝えないまま曖昧な態度をとり続けた。俺は甘えたのだ、アレルヤという存在に。
それが今、アレルヤを苦しめているのだ。

 自分達はもう既に、引き帰せない所まで来てしまっている。ロックオンは唇を引き結んだ。自覚したくなかった。自覚してしまえば、何かが終わってしまう気がした。今まで自身が固めてきた足元が全て崩れてしまう気がした。
 そう思い直し、心を沈める。そして自身でも饒舌と思う程に、アレルヤへと静かにそれを告げる。

「アレルヤ、解っているだろ?そういう約束を、したはずだ。身体だけなら付き合ってやるってな。」
「ロックオン!」
「俺じゃ・・駄目だアレルヤ。お前は幸せになるべきだ。」
「僕は幸せだ!貴方と・・僕はそういった筈だ!」
「・・・子供みたいに癇癪を起すなよ。みっともないだろ?」
「っつ・・」

 ビクリとアレルヤはその言葉に背筋を揺らした。
ツキンと再び胸が痛む。けれど、言わなきゃならない。アレルヤの為に。

「困らせるなよアレルヤ、俺を・・」
「ロックオン・・」

 語尾が震えた。

「俺を、これ以上・・・」

 ロックオンは、ハッとその口元を掌で隠し、アレルヤから視線を反らした。
今、自分が思わず口にしようとしていた感情にロックオンは愕然となった。

(何を・・・)

 何を、言おうとしたのだろうか。自分は。

「ロックオン?」

 動揺を悟られないように何か、何か言わなければならないというのに、不思議なほど言葉が思い当たらない。自分らしくない。いや、アレルヤと向き合っている自分には、本当は余裕なんてないのだ。
 必死で大人の自分を取り持っていた。余裕ある態度とは裏腹、必至でそれを作っていた。
何故かは解らない。けれどアレルヤを前にすると自分ではないような気分になる。感情が揺さぶられる。




「っつ・・」
「ロックオン。」

 瞳を丸くして、アレルヤは自分を真っ直ぐに見つめてくる。ロックオンは居心地悪気に視線を逸らそうとするが、伸ばされた掌にそれは阻まれてしまった。
 先程までのアレルヤの引き締められた唇が徐々に
緩み、瞳に涙を溜めている。けれど涙をこらえつつも、アレルヤの目元は優しいものに変わっていった。

「ロックオン。」
「アレルヤ?」
「そんな顔・・しないで。」
「そんな顔・・だと?」

 自分は今、いったいどんな顔をしているというのだろう。

「解らない?」
「何が・・」

 アレルヤの指先が自身の頬を辿る。

「今にも泣きそうな顔をしている。」
「つっ!?」

 そんなに酷い顔なのだろうか。
ロックオンは震える自身の指先で、確かめるように頬に触れる。涙は流れてはいない。
 しかし自分の顔は自分で見ることが出来無い為、今自分が、どんな顔をしているのかは、よく解らなかった。

「ロックオンは良く僕に我慢し過ぎだ、無理をするなと、口癖のように言うけど、じゃあロックオンはどうなの?」
「アレルヤ。」
「ロックオンだって、僕と変わらない。いえ、僕以上に我慢して・・・背負い過ぎてる。それが解らないの?」

 紅く充血した瞳が、きつく自身を責めるように睨む。

「貴方は馬鹿だ。」
「何?」
「馬鹿だと言っているんです。」
「何・・だと。」

 口元が引き攣る。
何故自分がそんなこと言われなきゃならない。
俺はアレルヤの為を思って言っているのに。

「っふざけんな・・」

 急激に押し寄せてくる怒りが抑えられない。

「ロックオン」
「なんで・・お前にそんなこと、・・言われなきゃなんねーんだ。」

 必死に叫びたい衝動をロックオンは堪えた。しかし、感情が高ぶって、荒っぽい口調になってしまう。
自身でも何故こんなにも怒りを感じているのか解らなかった。
 けれど、はっきりと頭で解っていたのは、自身の胸に突き刺すような激しい痛みと、解ってくれないアレルヤに対しての怒りが有ることだった。

「なんで、お前は・・、俺・・はっ・・・」

 みっともない。
良い大人が、年下の言動に、何をそんなに余裕を無くしてしまっているのだろう。きっとそれがアレルヤだから、自分はなおさらに怒りを感じるのだ。

「俺は、なんでこんなに・・お前に振り回されなきゃならない。俺だって・・なぁ・・」
「ロックオン?」

 ぎゅっと、アレルヤの肩をロックオンは掴み、顔を俯かせる。アレルヤの顔を真っ正面から見られなかった。

(ああーそうか俺は。)

 解ってしまったから、抑えることなんて出来なかった。

「俺だって、こんなに、お前の一挙一動に、振り回されるくらい、余裕無くすくらい!好き・・だ。あぁーそうだよ。好きなんだよ、お前が。」

 自分が何故こんなにも苦しい想いを感じていたのか、・・・好きなのだ。
 自分にこうやって素直に好意を向けてくるこの年下の青年が、いつのまにか好きになっていたのだ。自身でも無意識のうちに。

「だったら・・なんで!!?」
「だからこそ、俺じゃ駄目なんだ。好きだから、お前には幸せになってもらいたい。」

 それは俺自身の本音だ。

「だからさっきから何度も言ってるじゃないか!僕は幸せだって、ロックオンといる時間が幸せだって!」

 必死にアレルヤは自身へそう訴える。その言葉が、嬉しくないか、なんてそんな訳は無い。けれど・・・

「・・・けど、お前は絶対に俺との事を後悔する日がきっと来る。だから・・」
「後悔なんてしない!勝手に、僕の幸せを押し付けないで下さい!貴方にだってそれを決める権利は無い!決めるのは僕だ!」
「っ、アレルヤ!」

 ベットに押し付けられ、強くこの身体を抱かれる。いや、しがみつかれたという方が表現的には合っているだろうか?
 ギューギューと痛いくらいのそれが、身体を締め付け、心をも締め付け、俺から離れていかない。

「よせ・・アレルヤ。俺は・・」
「怖いんですか?」
「あ?」
「亡くすのが怖いの?」

 直接的なアレルヤの問いにヒクンと、喉が鳴る。アレルヤのそれは的を射ているようでそうではない。

「・・・俺は臆病なんだ。俺みたいな歳になると余計なことも考えちまう。」
「ロックオン、でも・・・」
「俺は、お前らみたいに強くないんだよ。」

 そうだ俺は強くなんかない。
過去の、家族をテロで失ったあの出来事が自身を引っ張り、前に踏み出すことが出来ない。

「亡くすのも怖い、がな。けどそれ以上に・・・」
「ロックオン?」
「俺は、自分が怖い。」
「どういう・・」

 アレルヤがそう問いかけるも、ロックオンは何も言わなかった。何も言えなかった。
 アレルヤは俺がこんなことを考えているなんてきっと思っていない。いやもしかしたら感づいているかもしれない。
 それでもこのことをアレルヤに向かって口に出すことなんて出来なかった。
 決意が揺らぐ、自分自身が揺らいでしまう。アレルヤを受け入れてしまったら、望まないつもりの未来を、自分は求めてしまうような気がするのだ。
 生きたい、と思ってしまう。俺はそれが怖いのだ。変えた世界に未来を望んでしまうかもれない自分が。

「すまない。アレルヤ・・俺は・・・」
「貴方がそう言って拒んでも、僕は貴方を諦めたくなんかないよ。」
「・・・諦めろ。」
「嫌です。」
「アレルヤっ!」
「僕だってっ!」

 強い力で肩を掴まれて、痛みが走る。自身の頬にアレルヤの涙が零れ落ちた。

「僕だって、怖い。もしかしたら、僕らの歩む道は終焉へと近づいているのかもしれない。だけど、だからこそ・・貴方と、一緒に生きて、生き残って!先の未来を夢に見たい!」
「アレルヤ・・」
「それさえ、貴方は許してくれないの?そんな小さな幸せさえ、僕達は望んではいけないの?」

 そんな事は無い。と、口にしようとして止める。自分はそうアレルヤに言ってどうするつもりなのだろう。自分がどうしたいのかが解らなかった。
 けれど、幸せという言葉がロックオンの胸にじくじくと浸透する。ロックオンの耳に、ふと家族の笑い声が聞こえた気がした。

「ロックオン・・」

 先程のしがみつくような必死なものではない、柔らかく包み込むような優しい抱擁に、昔に自身を優しく抱いた母親の腕を思い出して、ロックオンは泣いてしまいたくなった。

「好きです。ロックオン、好きだよ。」

 解ってる。それでも・・・俺は。
お前のそれに同じように応えてあげることなんてきっと出来ない。

(けど・・・)

 こんな事を考えてしまったのは、自分の弱さなのかもしれない。それはある意味一番残酷な答えだと自覚しながら。

(その時までは・・)

 好きだから、相手の幸せを願う。好きだから、幸せになって欲しい。
 彼が自分といる事が今は幸せだと言うのなら・・
その時まではーその時までは、アレルヤと共にあることを、俺が望んでも許されるだろうか。
 彼の為と言いながら、こんな疚しいことを考えてしまう自分は酷く醜悪なのかもしれない。けれど、それでも。期間が限られているならば、一つだけ、ただ一つだけ、願ってしまっても良いだろうか。
 アレルヤと共にいる事を。
けれど俺はこの決意だけは変えられないだろう。きっと、お前を置いていってしまうだろうから。
だからその時になったら。

「アレルヤ・・本当に俺なんかで良いのか?」

 だから俺は問い掛ける。
アレルヤに。

「俺は、きっとこの決意は変えられない。それでも、お前は良いのか?」

 お前はそれでも大丈夫なのか、と。
アレルヤに選択を迫る。ゴクンとアレルヤは喉を鳴らした。一度眼を伏せ、再び自身に向き合う。その瞳は決意を固めた色だった。

「良いです、今はそれで。」
「アレルヤ。」
「僕はロックオンが良い。だから諦めない。」

 例え貴方がそれを望んでいたとしても、簡単に手放したりなんてしてあげない。
 そうはっきりと言ったアレルヤにロックオンは苦笑した。
 自分は厄介な奴に捕まってしまったかもしれないと、この時思った。

「アレルヤ。だが、もしその時がきたら、お前は俺を・・」
「もう黙って、ロックオン。」
「アレルヤ?」
「今は貴方だけを僕に考えさせて。」
「おまっ・・・ん。」

 口を塞がれる。
常よりも余裕がないその口付け。
心の中で、ごめんなと言いながら。その唇を、そっと眼を閉じてロックオンは受け入れた。自身の肩を掴む少し震える掌に自身の掌をそっと這わせる。
 驚いた表情が可笑しくて、笑みを浮かべると、少しムッとしたのか、眉をしかめて、仕返しのように自身の掌を掴んで、絡めて、再び引き寄せ、口付ける。そんな子供っぽいアレルヤの姿に、ロックオンは更に笑みを深めた。
 この幸せが続けばと、ふと思ってしまった自分に、ロックオンは無視を決め込みながら・・
 俺はやはりずるいのかもしれない。
けれどこの温もりを失いたくなんてなかった。
アレルヤの自身に向けられる想いを無くしてしまいたくなかった。
 それでも俺はやっぱりお前の幸せを願はずにはいられないから。

 なぁ、アレルヤ。
俺がお前の隣にいるまでは、その手を離さないでくれ。
 けれど、もしいる事が出来なくなってしまったら俺なんか忘れてくれ。
 俺みたいな奴なんかじゃない、アレルヤ、お前を一番に考えてくれる人と、幸せになって欲しい。
 勝手だと罵ってくれても構わない。
俺は所詮そんな男だ。
だけど・・・本当は。
本当はな。



 −お前の、俺へと伸ばすその腕を
ただ素直に
取ってしまいたかった−






「ただ願う、君の幸せを」













 *そんな訳で、アレニル好きによる一期アレニルによる二期アレソマ(マリ)への精一杯の抵抗でお送りしました。(泣)
アレルヤさんの幸せはニールが望んでのこと!だと自分の中で決め込みました!!!
だから幸せにならないと許さないぞアレルヤぁー!!!!!!!!!!





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