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溢れる(ドロニル)






#ドロニル









ある都市での、高級ホテル内。そこでロックオンは、アレハンドロの護衛という形で、彼の警護に当たっていた。ロックオンはソレスタルビーイングでの仕事とは、また別口で、前々からアレハンドロのの下についている。
 スメラギ・李・ノリエガから、国連大使である彼の呼び出しを受けたから、行ってきてくれないかと言われ、それも任務の内である事を十分に理解していたロックオンは、素直にそれを受け入れた。
こういう任務をロックオンが受けている事を、他のマイスター達は知らない。
 言うつもりも一切無かった。
人の護衛は、時に直接相手を殺す事もある。
自分以外のマイスターには少々荷が重いとロックオンは思っていた。だがそれも、彼の元々の性分からきているものなのかもしれない。

 普段の格好という訳にもいかず、ロックオンは今、黒のスーツに身を固め、アレハンドロが視界に入る程の位置程で、待機している。
 そして彼の胸元には、いつ何が起こるとも限らない為、小型の銃が忍ばされていた。
だが、今回は他にもホテル内には何人ものSPが警戒に当たっている。そうそう何が起こる事は無いだろう。

(にしても・・)

 遠目から、ロックオンはアレハンドロの様子を伺う。柔和な笑みを浮かべる彼の姿と、向かいにはこれまた飛び切り端正な顔立ち、そして見た目からして上品そうなかわいらしい女性が食事を合間に挟みながら談笑している。
 おそらく女性は俺と同い年くらいではないだろうか。彼女の両隣には両親であろう姿が、愛想よくアレハンドロに娘の紹介をしているようだった。

(見合い・・ねぇ。)

 確かに国連大使ほどの地位ならば、そこらじゅうから縁談の話が持ち上がってきても不思議じゃない。あの人の歳ぐらいになれば、周りから身を固めろと責められる事だろう。

(そろそろ、頃合い・・・か。)

 ロックオンは、その様子を見つめ、ぼんやりとそう思った。彼と自分は、いわば人には言えないような関係を持ってしまっている。
 その始まりはなんとも唐突なもので、彼と出会った三度目の時に、彼自ら自分を誘ってきたのだ。

 女性はなかなかに面倒だよ。だが男どおしならば、そんな事は無いだろう?と。
 最初は彼の申しでを断ったロックオンだったが、抱き込まれ、軽く触れられている内に、不覚にも、そう不覚にも、自身のものが反応してしまったのだ。
 ソレスタルビーイングに入ってから、任務に追われ、そういう方面がご無沙汰だったせいもある。それを彼に指摘され、恥ずかしさも合わさって、少々自棄になってしまい、もういいやと勢いで抱かれてしまった。今考えれば、安い挑発である。

 それから今の関係がズルズルと続いている。時にはわざわざその為だけに呼び出して、という事もあった。その相手が女ではなく、男という事に対しては、ロックオン自身、別に男相手が初めてという訳ではなかったので、抵抗は少なかった。
 それもきっと彼は解っていたから、自分を誘ったのだろう。
 しかしそれは決して恋人と呼べるような関係では無いのは確かだ。今の関係を思えば、身体のつながりだけの愛人という立場が妥当だろう。
 そろそろけりをつけなければいけない。何より彼の立場的にも良くない。結婚を考えているなら尚更だ。
そう冷静に考える一方、ロックオンはアレハンドロに対して、若干の不満を零さずにはいられなかった。
 何故自分が呼ばれなければならなかったのか。
何故このような場所でこのような時に、彼を警護しなければならないのだろうか、と。
 別に自分でなくても良かった筈である。
仮にも身体の関係を持っている自分に、このような見合いの場面を見せつけるなんて、彼はいったい何を考えているのだろう。
 確かに自分は男だし、そんな事を気にするような奴では無いのかもしれない。
 けれど、やはりこの扱いは、酷いのではないかと思わざるを得なかった。
 はたっとロックオンは、その瞬間思考を止めた。

(っ、・・今・・)

 ロックオンはその感情に若干の戸惑いを覚え、その場で固まる。
 そして今度は不愉快だという顔を隠しもせず、その表情を歪めた。

(有り得ない・・だろ。この俺が・・)

 自分の愛の対象はいたってノーマル。付き合った事があるのも女だけ。身体を男と繋げた事はアレハンドロとの前にもあるが、それも生きる為に仕方なくだ。
幼かった自分が一人であの世を生きる為には、それしか方法が無かったから。故に決して自分は男が好きという訳ではない。まぁ、抵抗が無い、そういう意味ではアレハンドロと同じバイにもなるのだろうが、それでもやはり自分は元々、女性が好きなのだ。
 この感情はただ、自分と関係を持ってるくせに、見せ付けるように見合いする彼の事が気にいらないだけなのだと、無理矢理ロックオンは自身を納得させた。

 お見合いが終わった直後、ロックオンは彼とは顔を合わせず、すぐその場を後にした。これ以上あの場所にいる事が、何故だか堪え難かった。
 流石に黙って帰る事は憚れので、彼の携帯へ一言メールを送信し、自身が滞在しているホテルへと戻る。
帰って、そうそうシャワーを浴び、身体を清めると、ホテルに備え付けてあるバスローブを身につけ、ソファーへと腰を落ち着けた。
 時計を見ると、まだ寝付くには早い時間だ。時間を潰す為に、読み掛けだった本に手を伸ばし、ロックオンはページをめくり始めた。
 それから、どれくらい時間がたったであろうか、あと残り十数ページの結末の場面で、部屋のチャイムが鳴る。ルームサービスを頼んだ覚えはないし、こんな時間に誰だと訝しく思いながらも、扉の方へとロックオンは向かった。
 誰かを確かめる為、中から覗き込むと、自身が見知った人物が、そこにはいた。ごくりと驚きに思わず咥内の唾を飲み込む。
 慌てて、扉を空けると、そんな自分に、にこりと彼は、アレハンドロは笑みを浮かべた。
そんな彼の姿に、今日の見合いの場面を思いだし、ロックオンは表情を固くする。

「夜分遅くに、すまないね。」
「・・いえ、お構いなく。」

 そうは返したものの、はっきり言って今日はもうこの人に会いたく無かったというのが本音だ。なんだかよく解らない感情がドロドロしていて気分が悪い。用があるなら、早く済ませてとっとと帰って欲しかった。

「Mr.コーナー。何故貴方がここに?本日の任務は果たした筈ですが?」

 にっこりと微笑みながらも、ロックオンの口から常よりもきつい言葉が紡ぎ出される。
 そんなロックオンの様子に、一瞬アレハンドロは眼を見開くもそれは一瞬で、常の笑みをロックオンへと見せた。

「・・何、用があったからだ。中、入れてくれるかい?」
「・・・どうぞ。」

 この人にそう言われれば、自分は従うしかない。ロックオンは彼を中へと招き入れると、先程まで座っていたソファーへと腰を下ろし、じっと彼からの言葉を待った。
 だがいっこうに言葉は無く、自身を見下ろす形でつっ立ったままだ。ロックオンは痺れを切らし、その口から言葉を紡ぐ。

「なんです?用が無ければ、帰って頂けませんか?こんな風に自分を訪ねてくるなんて、国連大使様は相当お暇なようだ。」
「・・そんな君は相当、ご機嫌ななめなようだね。」
「いーえ、勘違いでしょう。俺のど・こ・が、不機嫌だとでも?」
「・・なら何故今日は私に会わず帰ってしまったんだい?」
「体調が優れなかっただけですよ。どうも国連大使様にご心配おかけしまして申し訳ありませんねぇ。」
「ロックオン。」

 唐突に自身の顎をその長い指先で捕らえ、口付けられて、ロックオンは一瞬狼狽る。だがすぐに、ロックオンは眼を細めると、アレハンドロの行為に順応するように、彼の首に腕を回した。

「・・ん」

 口内に、アレハンドロの舌が侵入し、自身の舌に彼のそれが擦り付けられる。ロックオンはそれに合わせて、自身のものを絡めた。深い口付けを終え、熱い吐息を漏らしながら唇を離す。口元から溢れた唾液を、ロックオンは掌で拭った。

「俺とやりたかったのなら、そうはっきりとおっしゃっれば良かったじゃないですか。」
「いや、拒まれるのではないかと思ってね。」
「拒みませんよ。あんたなら・・」

 ロックオンは、誘惑するように、彼の耳あたりに甘い声で囁く。アレハンドロもそれに満足そうに笑みを浮かべると、彼が身につけていたバスローブの合わせから掌を侵入させ、ロックオンの肌を辿った。
 与えられた快楽に、ロックオンは自身の欲がざわめくのを感じる。
 なんだろう、今日は我慢がきかない。

 ドサリと、ロックオンは彼を床に押し倒し、馬乗りの体制になる。
 逆に押し倒されてしまったアレハンドロは、常とは違う体制に、上擦った声を漏らした。

「ロックオン?」
「うるさいですよ。あんたは、黙って寝っ転がっていて下さい。今日は俺がします。」

 そんなロックオンの様子に、なんだか必死な子供のようだと、アレハンドロは、眼を細め、口元に笑みを浮かべると、自身の掌をロックオンの頬へと滑らせた。

「それは、貞操の危機を私は感じるべきかい?」
「そんな訳ないでしょう。俺はあんたと違って、男に突っ込む趣味は全くありませんよ。俺はあくまで女性が好きなもので。」
「減らない口だな。」
「お褒めに預かり光栄ですね。Mr.コーナー?あんたが気ー失うくらいよくしてあげますよ。

 薄く笑みを浮かべながら、飛び切りの誘い文句を口にするロックオン。
 そんな魅惑めいた美しい姿に、誰が逆らえようか。無理に決まっている。

「それは私の台詞だよ。ロックオン。」










終了











 ここまでで勘弁で。







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