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遠い背中(アレニル)





#アレニル









触れるという行為は難しい。向き合って触れるなんて事は尚更難しい。自分にとっては、他人に触れるという行為こそ慣れてなく、他人に触れられるという行為も慣れていない。他人というものに接触する事がとても苦手なのだ。自分はそうだった。確かにそうだった筈なのだ。

(初めまして。俺はロックオン・ストラトス。ガンダムデュナメスのパイロットだ。)
(はっ・・初めまして。アレルヤ・ハプティズム。ガンダムキュリオスのパイロットです。)

 そう言って、穏やかに微笑みながら手を差し延べてくる彼に、自分は戸惑いながらも、手を差し出し、自分のものを彼のものへと重ねる。
 触れた体温が温かい。
ドギマギと鼓動が大きく脈をうっている。
 こんな風に他人というものに優しく接して貰えた事が無かった自分は、酷い高揚感をその時に覚えた。それが彼とのファーストコンタクトだ。

 初めは敬愛
次には話しやすい仲間
そしてそれは居心地の良い相手となり、そして、今は・・
 触る事も触られる事も苦手だった筈が、彼に触れたくて、触れられたくて仕方がなくなっている。

 初めに感じていた彼への敬愛の感情は、今やこの感情故に乱され、犯され続けている。
 浅ましく、許しがたい。戸惑いと不安が入り交じり、段々と自分の彼への態度はよそよそしくなっていた。
 それでも彼が自分へと優しく接する度に、締め付けられるような、そんな気に陥って、ますます彼を僕は遠ざけた。
僕には遠すぎる背中。
犯してはならない人。
遠い人。
遠い背中。
自分へとそう言い聞かせる。
そうであって欲しいと望む。
けれどあの人は。

(アルルヤ、俺といるの嫌だったか?)
(え・・?)
(いやお前さん、最近俺を避けてるだろ?だからさ、もしそうならそうだと言ってくれ。お前さん優しいから、言わないでいてくれたのかもしれないが、なるべくなら、俺は他の奴らに嫌な思いさせたくないと思っている。もしアレルヤそうだったのなら、これから気を付けるからさ。)

 そう僕へと彼は少し寂しそうな感情をその瞳に映しながら、それでも僕への感情を配慮して、そう問い掛けてくるものだから・・

(違う。)
(え・・)
(違う・・んです。そうじゃない。)
(アレルヤ?)
(・・ロックオン、僕は。)

 それは衝動だ。彼の襟首を掴んで、自身の方へ引き寄せて、その無防備な唇に触れる。してしまった瞬間、僕はハッと我に帰った。
 僕にとって、彼はとても綺麗で、犯されるべきではない人で。
 そんな彼を今、僕は汚してしまったのだ。

(ごめ・・んなさい。)

 こんな感情を抱いてしまってごめんなさい。
好きになってしまってごめんなさい。
 キスしてしまってごめんなさい。

(貴方を・・僕は、汚して・・・)

 まるで聖人を汚してしまった罪人のように、僕は彼に許しをこう。
 僕の瞳にはとめどなく涙が溢れ出た。

(アレルヤ。)

 ロックオンがそんな僕の頬に触れ、伝う涙を指先で拭う。ビクリと瞬間、身体が震えた。

(お前さんは俺を買い被り過ぎてる。俺はそんなに綺麗なものじゃない。違うんだよ。)
(けど、僕にとって貴方は、そういう存在なんです。僕が貴方にそうであって欲しいと望んでいるんだ。)

 そうでないと、手を伸ばしたくなってしまう。彼が僕と同じだというのなら。きっと抑え切れなくなる。だから貴方には綺麗なままでいて欲しい。

(だが、たとえお前はそう望んでいても、実際の俺は全く違う。なぁ、アレルヤ。俺をそんな枠組みで遠ざけないでくれ。)

 そう言うとロックオンは、僕の頬に手を添えたまま、軽くその唇を僕のものへと触れ合わせる。

(っつ!?ロック・・オ)
(アレルヤ、苦しいなら、お前の好きなようにさせてやるから。だから、もう泣くなよ。)

 そう言って僕の身体を抱きしめるロックオンに僕は縋り付くように抱き返す。
 あんなに触れたくて、触れたくて、こうしたかった人がこんなにも近くにいる。
 僕は彼に縋り付く腕に力を込め、顔をあげると、彼の唇に恐る恐る再び口付けた。












遠い背中、そうだった筈の人が今はもうこんなにも近くにいる。それが例え彼の優しさからくるものだったとしても。
 今の僕はそれに甘えるより、他に方法が無かったんだ。
























そんな世界がOO。



お題配布元
http://hanauta.yukihotaru.com/
sitename>>ハナウタ




あきゅろす。
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