#ドロニル
(*甘?)
チリッとした一瞬の殺意を肌に感じとり、目の前の人物の名を咄嗟に叫んだ。
「コーナーさん!!」
彼の身体を殺意から庇うようにロックオンは自身の身体を擦り込ませる。次の瞬間辺りに銃声が響き、横腹を声にならない痛みが襲った。とてつもなく熱い。くっと、ロックオンはうめき声を漏らし、その身を崩す。激しい痛みがその身を蝕み、標準以上の汗がロックオンの白い肌を流れ落ちた。ちょっとマズイなと思いながら、それ以上血を流さぬよう、気休め程度に手をそこへと添える。周りが喧騒に包まれる中、コツコツと自身の方へと近づいてくる足跡が耳へと届き、ロックオンは視線を上げる。その人は眉を寄せ些か怒ったような顔を隠そうともせず、怪我を負った自身を見下ろしていた。それがなんだかロックオンには可笑しく、つい口元をあげてしまう。
「なん・・て、顔・・してるんです?」
いつも憎たらしいくらいに表情を崩さない貴方が。荒い息の中、そうアレハンドロへと言葉をかける。そんな自身に、更に眉をしかめたアレハンドロは無言で、膝を付き、自身のハンカチを取り出すと、抑えていなさいと言い、ロックオンにそれを持たせる。そして彼の膝裏へと腕をさし入れ、背中を抱いた。次の瞬間ロックオンはいきなり感じた浮遊感に、つい自身の現状を疑う。
「あ・・えっ!?」
そんな声を思わず漏らしてしまうのも、無理はないと言えば、無理は無い。どうして考えるだろう。そう。自分は男だ。誰がどう見ても、身長185センチの体格のしっかりした立派な男だ。
なのに、何故・・
(姫抱き?)
むしろ、どうやったら、こんな体格の良い男、姫抱きなんて出来るんだよ。いや、無理だろう。絶対に無理だろう。華奢なやつならともかくとして、重いに決まってる。
「コーナーさ・・」
「少し黙っていてくれ、私は今非常に不愉快な気分なんでね。」
そう言われると、ロックオンは何も言えず、大人しく抱えられたまま、ふて腐れたように顔を背けた。そんなロックオンを一瞥し、アレハンドロは自身の車が停めてある方へと向かう。
車の傍へと来ると、抱えていたロックオンに負担がかからないよう、そっとコーナー専用の車内へと押し込めると、例の病院へと運転手へ告げ、自身も乗り込んだ。
直ぐに車は動き出し、車内はシンッと静寂につつまれる。どうにもいたたまれない。ロックオンは、口を開こうとしないアレハンドロへと視線をやるも、その当人は、その長い足を組みながら、何かの書類へと視線をおとし、こちらを見ようともしていない。
いったいなんなんだよ全くと、何か一つ文句でも言いたくなり、ロックオンは口を開きかけたが、その瞬間クラリと頭がよろめく。
(っ・・貧血か・・)
未だ止まる事なく、申し訳程度に抑えるハンカチは既に自身の血で染まっている。
高いであろうそのハンカチを弁償かなぁーなど、暢気に考えていると、ようやく望んでいた低い声が耳に届いた。
「何故私を庇ったりなどした?」
視線をそちらへとやると、アレハンドロは変わらず書類に目をやりながら視線を合わせようとしない。なんだか子供のようなそれは、少々ロックオンを驚かせた。
「当たり前でしょう?貴方は国連大使だ。」
「君が私を庇う必要等無かった。」
「それは違う。」
ロックオンはアレハンドロが書類を持っている手をグイッと引っ張ると、真っ直ぐにアレハンドロの瞳を自身のそれと合わせた。
「貴方は、俺を犠牲にしてでも、守られるべきなんですよ。もう一度言います。貴方は、国連大使だ。ちゃんと意識してください。」
そして、ロックオンはアレハンドロへと顔を寄せると軽く彼の唇に自身のそれを合わせる。
瞬間見開かれた瞳は、珍しいとでも言いた気にロックオンのそれを見つめた。
「たまには・・な。」
そう言って、口元に笑みをのせたその表情は、魅惑的で美しいとすら、思わせる。
アレハンドロは眼を細めると、ロックオンの栗色の髪をかき抱き、自身の元へと引き寄せる。先程のお返しとばかりに、比べものにならない程の深いそれを施した。
んっと、鼻から抜けるような声を漏らし、ロックオンはそれを受け止める。アレハンドロの感情を表しているように、その舌は荒々しくロックオンの咥内を貪った。
「・・怪我人なんですよ、俺は。」
合わさった唇が離れ、深く息を吸い込みながら、悪態をつくロックオンに、アレハンドロは苦笑を漏らすと、グイッとロックオンの顎へと手をかけ、上向かせる。
「ロックオン。君は私が国連大使だから、守られべきだと言ったね?」
「・・まぁ、そうですね。」
何故先程の自分の言葉で、そのような言葉が出てくるのか、ロックオンは訝しく思い曖昧に答える。
「なら、ソレスタルビーイングのガンダムマイスターの君も世界にとっては必要で、守られるべきだと私は思うが?」
口元を緩く上げ、そう言葉を紡ぐアレハンドロにロックオンは笑う。
「俺の代わりなんて、いくらでもいる。それでもあんたは、俺にそう言うのか?」
「言うよ。」
「何故です?」
ロックオンがそう問いを返すと、彼の額に慈しむようなアレハンドロの唇が降りてくる。
「私にとってのデュナメスのパイロットは、ロックオン、今の所、君だけだ。」
彼らしいと言えば彼らしいその言葉。何だか可笑しくなって、ロックオンは彼の肩に自身の腕を絡ませた。
「・・・気障だな。あんた。」
「何とでも。だから君も意識してくれ・・・」
ロックオンは思う。
囁かれる言葉がとても甘く感じるのは、自身の思いあがりなのか。それとも・・
「君は、このアレハンドロ=コーナーが、気にかけている人物であるとな。」
だが、なんであっても、今はこの感情を噛み締めても罰は当たらないと。
再び降りてきた唇に、そっとロックオンは笑みを漏らした。
終了
おまけ(ギャグ、人物崩壊注意)
触れ合った唇に、二人の心は甘いものに加えて、欲に染まったものへと変化していく。
ロックオンはアレハンドロの頬に唇を押し付け、アレハンドロは、ロックオンの肩にその顔を埋め、舌を這わせる。常より敏感に反応を示すロックオンにアレハンドロは口元を上げ、彼の襟元を割り開く為そのシャツへと手をかけた。
だが、唐突にロックオンがガクリと後ろにのけ反ったのに対して、慌ててアレハンドロはその身体を支える。
「・・ロックオン?どうし・
「す・・みませ・・ん。」
荒い息の中ロックオンは、アレハンドロへの謝罪をその唇から漏らし、そしてこういった。
「貧血・・結構まずいかも?」
「・・・・・・」
沈黙。
「・・・リボンズ、病院にはまだ着かないのか?」
「すみません、アレハンドロ様。少々道が混雑しているようで、これでは後30分はかかります。」
(←最初からいました)
「・・・・・」
「コーナーさん・・俺・・もう駄目・・」
「まっ・・・待ちなさい!ロックオン!寝てはいけない!リボンズ!もっと早く病院に着けないのか!?」
「無理ですね。(きっぱりと)」
この時のアレハンドロの慌ててぶりは稀に見ぬものだったようである。
勿論この後ロックオンは一命を取り留め、その時のアレハンドロの慌てぶりをネタに本人をからかったそうな。
終
お題配布元
確かに恋だった
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