/Gsd(n) 衝動なる想い解き放たれた想い7 「………った。」 暫くして、ポツリと小さく漏らした彼女に、耳を傾ける。 「私、恐かった。本当は、恐かったんだ。お前と次に逢う時が、ただ恐かった。そして…そんな事を思う自分がひどく…嫌だった。」 彼女の瞳が揺れる。それは自身に対する怒りか、もしくはそんな自分への恐怖か。 「だって…解ってたんだ。自分が…再びお前と対面したら…私はきっと自分を偽れないって。」 そう…何度もイザークを愛そうとした。 自分は…彼が好きだ。そして彼も私が好きだと言ってくれた。彼を…イザークを愛せば…自分は幸せになれる。こんな風に…近くにない温もりへと…想いに耽て…傷付く事もきっと無い。私は…幸せになれる。 でも… 「…イザークとキスをしても…体を重ねても…でも…それでものその後で思いだすのは…何時もアスラン、お前だったんだ。」 私はなんて汚い女なんだろう。 なんて醜い女なんだろう。 あんな優しいイザークをアスランと重ねて見ていた私はなんて愚かなんだろう。 これでは余りに…余りにイザークに対して…酷い仕打ちではないか。 そんな自分嫌い。嫌いなのに…もう誰も悲しませたくなかったのに… 「ごめん…すまない。私…私は…」 それでもアスランが好きなんだ。 「よかった。カガリ…」 彼女の想いを聞き、安堵と共に彼女をきつく抱きしめた。そしてめいいっぱいの愛を込めて…彼女の耳元に囁いた。 「愛してる。」 俺の言葉に、私もと小さく呟いた彼女に、満足気に笑みを浮かべ、そのまま再び彼女とベットへとなだれ込んだ。 もう想いを違える事の無いように、きつくきつく彼女を抱きしめながら。 ーーーーーーー 「…………で?」 『………………。』 向かい会う二つのソファーの一つに、今しがた仕事から帰って来たであろうイザークが足と腕を組みながら、眉間に皺を寄せ、背を預けながら座っている。 彼の向かいにはアスランが決意を込めた目で、カガリが何処かしらで怯えを滲ませる瞳をイザークに向けていた。だがその瞳の強さは反らされる事なく彼へと向けられている。 「それで…貴様達は、俺に叱咤されたいのか?もしくは許してもらいたいのか?」 幾分か普段より低い声でイザークは彼等へと口を開いた。 「イザーク許せとは言わない。だが、俺はカガリが好きなんだ。」 彼の言葉に、迷う事なく、しっかりとした言葉をアスランは返した。それにカガリも意を決して言葉を続けた。 「イザーク…すまない。でも、私…」 それでもイザークの罪悪感が強いのか顔を歪め、今にも瞳からは涙が零れ落ちそうだ。そんな彼女にイザークは深い溜息をはき、そして口を開いた。 「そんな顔をするな……カガリ、俺は解っていた。」 「…え?」 驚きを含めた声で、カガリはイザークに聞き返す。 「お前がアスランへの想いを捨て切れないでいるのは…知っていた。だけど俺は…それでも…お前の傍にいたかったんだ。」 静かにだが真剣に言葉を紡ぐイザークを、彼等は黙ってきいていた。 「それに…お前が弱ってる時に付け込んだのは俺だろう?だから…お前がこれ以上…気に病む必要は無い。むしろ俺はカガリ、お前に感謝したい。」 そしてイザークはカガリに向かって優しく微笑んだ。 「俺の想いを受け止めてくれて…傍にいさせてくれて、有難う。」 カガリは耐え切れずに肩を震わせ、涙を流した。そしてイザークは座っていたソファーから離れ、彼女の傍へと足を進めると…その身体を抱きしめた。 「…幸せになれ…カガリ。」 バタンと背後で扉が閉まる。残されたのは、アスランと今だ瞳を涙で濡らすカガリ。 「カガリ…俺で本当に良かったのか?」 「何を言ってんだ……今更…」 勢いを無くし、不安気に尋ねてくるアスランに、涙を零しながらも、ハァーと溜息をカガリは漏らすと、今度はそーと自分からアスランに抱き着いた。 「言っただろ?私はお前が好きだって…」 「そう…だな。」 安心したかのように力を抜き、カガリを抱きしめ返すと、誓いを込めて彼女に口付けた。 今度こそ、目の前にいる誰よりも大切なものを見失わないように…誓う。 傍に居ると ーそれは想いを形作る光りとなって… 終 |