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全てを棄てれば許されるのだろうか(亮←十前提エド十)

あいつが彼へと向けてるいる視線…心を…
僕自身に振り向かせたかった
…あいつの心を僕だけのものにしたかった
僕だけを見て欲しかった

ただ…それだけ…
心内に秘める想い
あんな事が無ければ…
一生…吐き出す事さえ無かったかもしれない









「…十代。」

今だ丸藤亮が立ち去っていった方向を向いたまま、微動だにしない十代の肩を掴み、こちらへと向かせる。

偶然にも聞いてしまったカイザーと十代の会話。それは彼が一方的に十代との別れを告げるものだった。

今の自分は昔の自分とは違う……そんな自分勝手な理由で、十代へと別れを告げた彼に、憎悪という感情が沸き上がる。

けれど、そんな酷い事をされた筈の本人は予想に反して、泣いてはいなかった。

「…エド…?」

「…十代…お前…」

「あー…聞いてたのか…今のやつ…ごめんな。嫌なトコ見せてさ…」

格好悪いなぁー俺。と…先程の事など嘘のようにおどけたように言う十代。けれど、その声はひそかながらも、震えていた。震えながらも、その口は出来るだけ明るく言葉を紡ぐ。

「つっ…なんでだ…十代……」

−なんでそんな風に笑えるんだ?−

今にも泣きそうな顔をしながらも、それでも心配させないように、不器用に笑う十代。
深く傷ついているはずなのに…他人に弱音をはく事を良しとしない。…そんな姿に、胸の奥がチクリと痛む。

−笑うな…僕の前で…そんな風に笑うんじゃない。−

こんな事になっても、泣かない彼に、苛立つ心が止められない。


「お前は…捨てられたんだ!それはお前だって分かっているだろう?」

「分かってる…だけど…あいつ…俺に別れを告げる時…辛そうな顔してた…カイザーだって、好きで…こんな事言ったんじゃないと思う。多分…どうしようも無かったんだ。」

別れを告げられても、今もまだカイザー亮を庇うような事を言う十代。
そんな彼に苛立ちはドンドン増していく。

−どうして…そこまであいつを庇う…どうして…そこまで…−

「…憎く…ないのか?お前を捨てたあいつが…」

「そんな訳無いじゃん……だって俺は…」












−俺は…あいつが好きなんだから−













それは…自分の中の何かを壊すのに…十分なものだった。
















…………………………
















暗闇の中…窓から挿す月明かりだけが辺りを照らす。

エドは自分の隣で、今は眠る十代の髪を指先で絡めるようにして撫でた。
彼の身体に散らばる鬱血した痕は、先程までの行為を物語っている。

(僕は…何をやっているんだ…)

自分の欲望だけを彼へと突き付けて…
力で押し付けて、無理矢理抱いて…
僕はいったい何がしたかったんだろう…

十代の頬に流れた涙の跡を、エドは彼の髪を弄っていた指先でスルリとなぞる。
漸く見れた彼の涙は、痛々しいと同時に、とても愛おしかった。

(あぁ…そうだ…僕は…)

− 十代を…自分の手で泣かせたかったんだ。 −


自分の愛は何処か屈折したものなのかもしれない…
だがしかし…
酷く辛い事があっても、本当は苦しんでいても、笑おうとする彼を、泣かせたくて、弱音をはかせたくて…



(馬鹿だ、馬鹿だとは思ってはいたが、此処まで馬鹿だとはな…そんなにあいつが好きか?)

(エ…ド…?)

(ふざけるなよ…僕がそんな嘘の笑顔で…騙されるとでも思ったのか?)

(違っ…そんなんじゃあ…)

(もう黙れ。)

(つっ!!)




もう…その先はあいつを貪る事しか頭に無かった。
十代の気持ちを無視して…
ただ僕自身の心向くまま…

「…お前の心が僕のものだったら良かったのにな。」

もしそうだったとしたら…
お前のその笑顔を曇らせる事など無かったのに…

「十代…」

だが…
この想いを伝えるのに…
僕は無器用すぎたのかもしれない。
素直に伝えられたのならこんな想いしなくてもよかったかもしれないのに…
僕は…


「十代…僕は…」

−全てを棄てれば…
お前にこの気持ちを許してもらえるのだろうか…−














お題配布元
A.M 0:00'より









あきゅろす。
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