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昔に引きずられながらも明日を望む(亮→十)





*この話は、本編「宝石獣VSサイバーエンドドラゴン」を前提にした話です。







自分より明るいエメラルドグリーンの髪が映像を通して、自身と対峙する。あくまでも、デュエルが楽しいのだと感じさせるそいつの姿を見て、俺は一瞬だけ眉をしかめた。
似ていた。
そいつの自分へと向けられた眼差しが、何時までたっても忘れられぬ、あいつに
思い出すのは、過去の事。あいつと初めてデュエルをしたあの時。あいつの心底からデュエルを楽しんでいる心と、溢れんばかりの笑顔が
酷く眩しくて
そう、あの時自分の中で十代という名前が深く刻まれていた。

眼の前のヨハンと言う者の眼は、そんな十代と同じ眼をしている。
無限の可能性をその身に潜ませた存在。

十代
過去を捨て、ヘルカイザーとなった今になっても、自分を縛ってやまない存在。
忘れたくても、忘れられない。今の自分を唯一揺らがせる者。
捨てた筈の過去が、十代を通して、次々と頭に流れ込む。

(っ…俺としたことが…)

そんな十代と過ごした日々が、忘れかけていた自身の暖かい感情までもを引きずり出しそうになり、俺はそれを無理矢理に押さえ込む。
今となっては、全て自分にとって不要なものだ。
アカデミアでの事が全て自分にとって無駄だったとは言わない。
だが、あの頃のリスペクトを重んじるデュエルだけでは、この手に勝利は掴めない。そんな温い感情だけでは、どうにもならないということを、もう自分は嫌というほど思い知らされた。
だからこそ俺は、勝利を手にする為に、今までの生き方を捨て、アンチリスペクトを掲げるヘルカイザー亮としての生き方を選んだ。

所詮は過去。
アカデミアで十代と過ごした日々も何もかも。
自分にとっては捨てた筈のものなのだ。
それなのに、

(カイザー!デュエルしようぜ!デュエル!あんたスゲー強いからさ!俺…カイザーとデュエルしてる時が一番楽しいんだ!)

頭に過ぎる光景は、十代との事ばかり
無意識に、姿が見えぬ十代の姿を探して、ヨハンの後ろの方へと俺は視線を泳がしていた。
そんな己にハッとし、諦め気味に溜め息をつく。

(俺も…未練がましい事だな。)

十代に対する自分の想い。捨てたくても、唯一捨てられなかったこの感情は、ヘルカイザーという自身の心にさえ波をたたせる。

認めたくないとおもいつつ、つい十代と一番一緒にいるであろう眼の前の奴を恨めしく思ってしまっている自分。
そしてそんな自分に自己嫌悪する。

(今でも好き、なんて…な。)

過去を捨てても、捨て切れない感情が有る限り、一生、中途半端なまま。
カイザー亮でもヘルカイザー亮でもない。
どっちにも成り切れていない自分は、ならばいったい何なのであろうか。

(…だが今更だ。)

そんな事今更考えても仕方が無い。俺は一度あいつを捨てた。許されない事をした。
ならば見えないあいつを心配する資格など有りはしない。

そう今は、ただ
自身が求めるものを埋める為に
デュエルの事だけを。
眼の前にいる敵をただ倒すのみ。
今の自分の生き方をただ信じて
たとえ
その敵が、十代。お前だったとしても俺は勝ってみせる。
昔の自身に引きずられながらも、ただ今を生きるしか、道は無いのだから。





















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