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小ネタ
取材旅行と小説家 その後
「なんですかこれ……」

六小路に渡された謎の錠剤が入った小瓶を手に、蓮瀬は不審そうに眉をひそめた。

瓶にはどこの国のものとも知れない文字が大きく書かれ、植物の根らしきものとネコ科動物の顔、そして勃起した男性器がパッケージにデザインされている。

あまりによく分からないその錠剤は、六小路の知り合いが外国に行った際の土産らしい。そして六小路はその錠剤を、蓮瀬に横流ししようとしていた。

「これ絶対変な薬でしょう? パッケージに堂々とこんな男性器を描いて……僕は絶対に飲みませんからね」
「まあまあそう言わずに、なんでも外国の精力剤らしいよ。試しに飲んでみてはどうだい?」

六小路はそう言って蓮瀬の瓶を持つ手をぐいぐい押してくるが、蓮瀬も全力で嫌がって飲もうとはしなかった。

「精力剤なんて今飲む必要ないですし、第一そんな怪しい物飲みたくないですよ!」
「大丈夫、私も飲んだが体に害はなかったよ」
「……飲んだんですか。よくこんなの飲む気になりましたね。絶対パッケージのピューマっぽい動物の一部が練り込まれてますよ」
「これはピューマじゃなくて山猫の仲間だと思うけどね。ううむ、しかしいつになったら効果は出るんだろうね。飲んで十分はたっているはずだけど」

まさかついさっきこの精力剤を飲んだのだとは思わず、蓮瀬はあきれてしまう。そして何か異変が起こった時のため、すぐ救急車が呼べるようにと携帯を手元に置いた。

「大げさだな、君は。別になんともな……ん? 気のせいかな、体が熱いような」
「早速効果出てるじゃないですか。それとも副作用か何かですか?」
「分からないが……すごく熱い。君の顔を見ているだけで勃起してしまいそうだ」
「や、やめてくださいよ。うわ、硬くなってる……」

精力剤の効果か、六小路の股間はスラックスの上からでも分かるほどに張りつめていた。

「どうしよう、とてもうずいている。このままではシミになってしまうよ」
「だからってここで脱がないでください! 僕に見せてどうするんですか、そんな、勃起なんか……!」
「見せたらなんやかんやで抜いてくれるんじゃないかと思って。駄目?」
「いいって言うと思いますか?」
「冷たいなあ、しょうがないしトイレに行ってくるよ」

残念そうに背中を丸めながらトイレへ向かう六小路を見つめ、蓮瀬はため息をついた。そして例の精力剤を手に取ると、ごみ箱へ投げ捨てた。

終わり


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あきゅろす。
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