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魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜集いし者達〜
プロローグ

 午後の光が明るく照らす廊下を青年が歩いていく。青年の手にはティーポット、仄かなを洩らしながら彼はゆっくりと廊下を進み、ピタリと止まった。ふと横をみると現れた、両開きの扉。それを前に青年は一度深呼吸すると、ノックと共に扉の向こうに話しかけた。                     
「失礼します。騎士カリム、お茶をお持ちしました」

 どうぞ、という声を待って部屋に入る。部屋に居たのは3人の男女。小さなテーブルを囲んでおり、その上には幾つかの資料が散らかっていた。
 
「お久しぶりです、クロノ提督、騎士はやて」

 数週間ぶりの友人への挨拶。それに対し相手から返ってきたのは“苦笑”だった。
「久しぶり、あと“提督”はいらない」
「久しぶり、私も普通でええよ」

 青年も相手の発言の意図を理解したのだろう。少し顔を紅くしながら、つられて笑う。

「機動六課についてのお話ですか?」

それぞれのカップに紅茶を注ぎながら青年。

「ああ、中々大変だよ。試しに君も六課にいくかい?」

冗談っぽく言ったクロノだったが、対して青年は至って真面目な顔。

「勘弁してください。あんな部隊に僕が入る余地なんてないですよ。僕は裏方として、陰ながら協力しますよ」

「ま〜たロッサみたいな事言って」
「今の君だったら“あの”隊長陣ともいい勝負できるんじゃないか?」

 二人の事は世辞ではなく本物。しかし青年はそれすらまともに取り合わない。

「無理無理無理。シグナムさんなんか人間と闘ってる気がしませんもん」

 他愛もない話。互いに笑い合ううちに、紅茶の最後の一滴までカップに落ちきった。ほんのりとしたいい香りが辺りに満ちる。

「どうぞ」

淹れた紅茶を皆に配る際、テーブルの端へと寄せてあった書類がふと目に入った。

「機動六課新分隊“Shadows”設立について……」

青年の視線に気付いたのか、はやてが資料の束を手で覆う。

「おっと、勝手に資料を見るのは感心せえへんな」

 資料を自らの胸に押し付け、両腕で抱き締める姿は“乙女の秘密”とでも言いたいかの様であったが、ワタワタと慌てる青年の姿をつまみに、にやにやと笑っている状態では、乙女らしさなど微塵も感じられず、むしろ飲んでいる物が紅茶ではなくビールなのではと思わせる程親父くさい。

「すみません。少し気になってしまい……」

頭を下げた青年にはやてはええよ、とわらって許し、。      
「諸事情で魔導師を増やす事になったんやけど、もう制限ギリギリでな……」

「制限に見合う人材を探すのがなかなか難しかったという訳だ」

「“かった”と言う事は……」
クロノの言い回しに反応する。過去形と言う事はつまり──

「あぁ、やっと決まったよ。隊長、副隊長は共に騎士──どちらもAランクながら六課の隊長陣に張り合える人物だ」
「はぁ〜、名前は?」

 青年が質問した途端、クロノの瞳がガラスのように固くなった気がした。突然立ち上がり、青年の隣に近づく。
「……なぁ、君は確か陰ながら協力したいと言っていたな」


「あの、クロノさん……?」

イマイチ状況が読み取れない青年、対してクロノは無言のつまま青年に何かをつきだした。       
「これは……」     
 それは、小さく折り畳まれた一枚の紙であった。青年は首を傾げながらそれを受け取り、広げていく。そして広げ終えた紙の表面を見た瞬間──青年は頭をひっぱたかれたかのような衝撃を受けた。おもわず口からは、放心したようなマヌケな叫びが漏れ出る。

「なっ、なっ、なぁぁぁーっ!」


「まさに陰ながらの協力だ」
「うん……我ながら最高のアイディアや」

 満足そうに頷く二人を余所に、まるで熱された金属を持った様にわたわたと書類を手の内が踊らせていた青年だったが、なんとか持ち直し、自分の右側にいる直属の上司へ向く。いつの間にか3人は立ち上がり、テーブルではなく青年を囲むような形になっていた。

「あ、あのカリムさん、これは……」

 震えながら彼は質問する。冗談であってくれとの願いを込めて。


しかし──


「えぇ、それは見ての通り──貴方への辞令です」


 その願望が通用するには相手が余りにもそう──現実的過ぎた。無情な宣告を受け、崩れ落ちる青年。そして彼の手から滑り落ちた書類、それには達筆な羽ペンのサインと共にこう記されてあった。




騎士ゼフィ・ノクテムを遺失物機動六課に派遣、シャドウズ分隊長に任命す



魔法少女リリカルなのはStrikerS〜集いし者達〜 (強制的に)始まります。

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あきゅろす。
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