promise
イクシフォスラーの窓から、目が回るような景色を眺めていた。
景色は脳には届かなかった。
紫の瞳の奥には、戦友と、部下と、愛する人が瞬間的に駆け巡っていた。
まだ何を望むと言うのか――
自嘲する様に窓から顔を背けると、遠い日の幻覚を視た。
『 』
シャル。
初めて手に取った時の、見た目とはそぐわぬ重量感。
他のレイピア等とは比べ様が無い、抵抗感と、そして密着感。
『外でも眺めていないと、酔っちゃいますよ』
マントの下の重みは、今は無い。
今でも、華奢な背中越しに、お節介な声が聞こえてきそうだった。
『坊ちゃんだったら、流れ星に何をお願いしますか?』
――うるさい奴だな。
片時も離れる事は無かった。
自分の身の軽さを、改めて知った。
あの時、あいつは何と言っていた…
視線を落とすと、自分の手が視界に入った。
エルレインによってこの世に再び放り出され、正体を隠すと決めた時、シャルの存在も隠さなければならなかった。
初めの内は、安物のレイピアを振る間に、使い慣れない為か手の皮がボロボロになる事が多かった。
剣が、自らの手と反発しあう事に気がついた。
『ほぅら、僕の有り難さが分かったでしょう、坊ちゃん。』
イクシフォスラーが旋回して、何かが転がった音がし、意識が現実化した。
ロニとハロルドが何か言い合っている。
再び船体が大きく揺れ、身体が後ろに倒れかかった時、背中に何かが当たった――
そうか、
思い出し、後ろに何も無い事を確認すると、小さく溜め息をついた。
余計なお世話だ。
そう呟き、ジューダスはコックピットへ向かう。
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