[携帯モード] [URL送信]


promise



イクシフォスラーの窓から、目が回るような景色を眺めていた。

景色は脳には届かなかった。
紫の瞳の奥には、戦友と、部下と、愛する人が瞬間的に駆け巡っていた。


まだ何を望むと言うのか――
自嘲する様に窓から顔を背けると、遠い日の幻覚を視た。


『                』


シャル。

初めて手に取った時の、見た目とはそぐわぬ重量感。
他のレイピア等とは比べ様が無い、抵抗感と、そして密着感。


『外でも眺めていないと、酔っちゃいますよ』


マントの下の重みは、今は無い。
今でも、華奢な背中越しに、お節介な声が聞こえてきそうだった。


『坊ちゃんだったら、流れ星に何をお願いしますか?』


――うるさい奴だな。




片時も離れる事は無かった。

自分の身の軽さを、改めて知った。


あの時、あいつは何と言っていた…




視線を落とすと、自分の手が視界に入った。


エルレインによってこの世に再び放り出され、正体を隠すと決めた時、シャルの存在も隠さなければならなかった。

初めの内は、安物のレイピアを振る間に、使い慣れない為か手の皮がボロボロになる事が多かった。

剣が、自らの手と反発しあう事に気がついた。

『ほぅら、僕の有り難さが分かったでしょう、坊ちゃん。』






イクシフォスラーが旋回して、何かが転がった音がし、意識が現実化した。


ロニとハロルドが何か言い合っている。



再び船体が大きく揺れ、身体が後ろに倒れかかった時、背中に何かが当たった――




そうか、




思い出し、後ろに何も無い事を確認すると、小さく溜め息をついた。



余計なお世話だ。



そう呟き、ジューダスはコックピットへ向かう。


←back tocontinuation→

7/8ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!