promise−Kyle Dunamis− 主人の2度目の夢が醒めた時、僕はこの世の、神とか呼ばれる人物と、主人の愛した女性を、心の隅で呪った。 彼女さえ愛さなければ、いや、彼女が屋敷に居なければ、主人は、こんなにも苦しい思いをせずに済んだ筈だ。 しかし主人は、最後まで彼女を愛し続けた。 誇りをもって、仲間を裏切った。 だから主人は 裏切り者 の称号さえも、甘んじて受けた。 称号を与えたのは、カイル。 かつて、主人の心を融かした男の息子だ。 その本人が、主人に与えた名の意味を知っていた筈は無い。 有り得ない。 主人は知っていた。 しかし、主人は厭う事無く受け入れ、裏切り者の名を背負った。 ただ只管、その事実を隠匿し、己の心を偽って。 父に似たのだろう。 眩し過ぎる彼の心は、気負い過ぎて重たく湿った主人の心に、丁度良い刺激を齎した。 彼もまた、主人の心を融かすのだろう、と思った。 この時ばかりは、僕の予想は的中した。 主人の素顔を見た瞬間、凍り付いたような眼差しの 銀髪のデュナミス。 父似の碧眼を大きく見開かせ、一瞬だけ柔らかな金髪を揺らした。 そんな気配の中、僕だけが主人の心を知っている、と、叫びたくなった。 主人の心は、もう定まっていた。 次に主人が叫んだのは、偽りの名では無く、裏切り者の称号だった。 主人にとって、裏切り者の称号は、偽りの自分から解放された証にも近しい意味を持っていた。 碧眼の少年は、迷わず裏切り者の手を取り、叫んだ。 裏切り者なんかじゃない 仲間だ ←back tocontinuation→ [戻る] |