久遠の空 【完結】 エピローグ むかし、むかし… ていうかそんな昔の事でもないけれど(むしろ最近!?) ある森に囲まれた平地に、大きなお屋敷がありました。 そのお屋敷の中には 一人の執事と旦那様、それに、使用人一人と同居人6人が住んでいます。 お庭に出て、する必要もないのに戦闘訓練をしているのは沖田総悟くんと、神楽ちゃん。 執事が綺麗に整えた庭を、これでもかと言うくらい破壊していきます。 これでも二人は許婚同士なのですが、今はまだライバル気分なのでしょう。 「死ねェェェェェ!チャイナァァァァァ!!」 「煩いアル、サドこそ地獄に堕ちるヨロシ!!」 玄関の固い地面で、一人ぼっちでバドミントンラケットを振るっているのは山崎退くん。 この家の使用人ですが、ただ単に地味なのかサボっているだけなのか、仕事をしているところを見たことがありません。 「え!?酷くないですかそれ!!」 屋敷内を走り回り熱烈なウザいラブコールをしているのは近藤勲さん。 ゴリラでストーカーで、どうしようもない人です。しばらく黙っていてくれないのかな、この人… 「お妙さぁ〜〜〜ん!!愛して…あぶゥ!!」 「気色悪いんだよクソゴリラァァァァァ!!」 飛び掛かるゴリラに綺麗な回し蹴りをお見舞いするこの女性は、志村妙さん。 暗黒物質を作成でき、台所に立たせてはいけないという珍しい女性です。 そして、台所… パティシエばりのケーキを作っている銀髪紅目の男性は、執事の双子の兄、坂田銀時です。 「オイ駄眼鏡ェ、小麦粉急げよ!!」 三度の飯より糖分を。 昔は天野という超名家の嫡男でしたが、その家のご当主に勘当されてからと言うもの、旧姓に改めこの家のシェフを勤めております。 「銀さん、そろそろ準備しないと夕食に間に合いませんよ!!」 坂田シェフのアシスタントをしている男の子は、駄眼鏡…じゃない、志村新八です。 妙さんの弟で、山崎と同じくらい地味な、ただの眼鏡です。 「えっ?!僕の説明それだけェェェェェ!?」 あ、そうだ。 ツッコミ担当です。 そして、書斎で書類を裁くこの男は土方十四郎。 この屋敷の主にして、執事の、生涯の伴侶でもございます。 因みに、執事にベタ惚れしている愛妻家です。 「久遠、いねェのか?」 「ここにございますよ、旦那様。何か、ご用でしょうか?」 天井から音もなく、男を掴んで参上したのはこの屋敷の執事である私、天野久遠にございます。 双子の兄と共に家を出て、そのままこの屋敷の主と夫婦となったため、今は土方と申します。 「茶が欲しい。…誰だ、そいつは?」 「ええ、天井にて旦那様の事を探っていたようですから、捕らえました。いかがいたしますか?」 捕らえられたこの男は、爆撃でもされたのか全身黒焦げのボロボロで、悲惨な状況です。 「任せる。それよりも、早く茶が飲みたい」 「新八に煎れさせますか?」 「テメェの茶が飲みてェんだよ、わかってんだろ?」 「畏まりました、お任せを」 執事は艶やかに微笑み、そのまま視線を男に移します。 「さて、貴方には聞きたいことがたくさんありますから」 "覚悟なさいな" 「久遠、俺以外の男に笑顔なんて見せんな」 "そいつ、殺したくなるだろ?" 主も微笑み、執事に深いキスをしました。 侵入者を捕らえた後とは思えない行動に、思わず男も声を荒げます。 「て…テメェら一体なんなんだよ!?とくにテメェ何者だ?」 男は目を見開いて、執事を指差します。 執事は主と口づけした後、見紛う程の美しさで男に告げました。 「私…ですか。至って平凡な、土方家の執事でございます」 執事は切に願います。 久遠に… この幸せが続けば良い、と。 ―終わり― 久遠:時がかぎりなく続くこと。永遠。 [*前へ] [戻る] |