08
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医務室で、今の自分にはただ待つしかない。
それ以外は無力だ――
頭の痛みに願わくば早く、早急に、迅速に、この手にする事を望むばかり。
「おぉ?」
その声に希望を託す。
今度こそ――、
どうか――、と。
「これっぽいな」
願いは――、
ようやくエーリルの望みを叶えてくれそうだ。
08 -守る者として-
「悪いな。随分待たせちまった」
小さな器に何種類か――、粉々に砕いて混ぜた粉末状のものをナイレンは差し出してきた。
待ちに待った薬にエーリルは両手で受け取ると、頭の痛みでしっかり笑えないが、それでも感謝が伝わる様に、口元に笑みを浮かべ頭を下げる。
「いいえ、作って頂けただけで助かります」
「いや、管理不足だ。すまねぇな」
ナイレンとエーリルが今居るのは、駐屯用の屋敷の一室にある医務室。
広くもなく狭くもないその部屋には、薬草等の薬の材料が入った瓶が収納されている戸棚とベッドがいくつか、それと部屋の名称通り医療用の道具や小物類、魔導器で冷却管理されている貯蔵庫が、部屋の空間を上手く使って綺麗に並べられてあった。
――のはつい先程までで。
今は、棚に収納されていた瓶が、まるで家捜しにあった様にほぼ机に出され、散乱はしていないが第一印象からは霞み始めている。
その瓶の大きさはは掌サイズの物から頭サイズまでより取り見取り。
「早く飲んでしまえ。見てても頭痛は治んねぇぞ」
「はい…、薬なのにめっちゃ綺麗で」
ズキズキと鈍痛は健在なのだが、彩り豊かな粉がエーリルには珍しく――、瞳を輝かし眺めているばかりで一向に口にしない。
ナイレンはそんな彼女を余所目に、用は済んでいないが休憩にと、近くにある椅子を寄せて腰を掛けた。
「そりゃあ帝都で使ってるやつとは違うからな。あっちで飲むのは土色だろ。此処ではその奇抜な色が主流だ」
「へぇ…。採れる草が違うんですね…」
その言葉にますます彼女の瞳はきらめく。
「そんな感じだ。ちなみに帝都のやつより良く効くぞ」
「胃、あれますか?」
「大丈夫だ。整腸剤も入れてある。安心していい」
「じゃ、いただきます…」
ぐっと気合いを入れ、エーリルは器に乗ってる薬を口に入れ、次に水を流し込んだ。
―――瞬間、
「!!!」
あまりの苦さに喉で悲鳴を上げながら彼女は驚愕した。
飲み込む事も吐き出す事も出来ずにリスみたいに頬を膨らまし、瞳は涙目だ。
「良薬口に苦しだ。かなり苦いぞ」
自身の隊に配属された三人目の女性の苦悶に呑気に笑い、ナイレンは少し遅めな忠告を静かに送った。
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