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そんな上司に、知ってて口にしなかった事を隊長だろうが一言文句も言ってやりたいと脳裏を過ぎるが、如何せん口内を満たす厳しい現実さが今はそれを忘れさせてくれる。

どの道この激苦い薬を飲み込まなければエーリルは四方八方塞がりで何も進まない。



(せぇーのっ!)


いつまでも耐えれる筈もなく覚悟を決めて飲み込む。
――ゴクリ

と、液体は喉を通り、口から息を吸い込むことが出来るようになる。

口に自由が戻った事によって、部屋に居るただ一人の人間がこの街の管理責任者だろうが、この想いは止められない。
エーリルは息を吸う以外に口を開く。




「まっずっ!!めっちゃマズすぎっ!!おえっ!」


素直な想いを全力で言葉に込めてエーリルは虚空を凝視して、ワナワナと両手を震わして叫んだ。
立ち上がった背中を汗がつたい落ちて肩を上げ身震いをすればもう一度彼女は口を開く。


「ヤバい!!苦すぎマズすぎぃ!!有り得ないっ!!」


先程までの苦痛は通り抜けたが、その舌を今度は後味として苦味が支配していて―――

味わった事の無い味にただ、衝動に駆られる。



この状態に形振り構っていられなくなり、エーリルは逃げ道を求め流しに駆け寄った。勢いよく蛇口をひねると期待に応える様に勢いよく水が流れ出し、それで必死に口を洗う。



濯いだりうがいしたりと忙しく動くエーリル。その背後ではのほほん――と、相変わらずナイレンは椅子に掛けたまま彼女を気にする様子もない。


「後は安静にしとけ」


そう口にしながらテーブル上の瓶を一つ動かす。





「隊長ぉ……」


平然なナイレンに、取り敢えず平静が保たれる程に落ち着いたエーリルは、恨めしげに振り返えった。



「ゆって下さいよぉぉ…。はぁ…」

痛みで気力も萎えているというのに発狂しかけ、半眼で呻けば疲労から大きな嘆息が落ちた。
ついでに何だか悲しくもなってくる。




「ピートの奴がなぁ、以前飲む前に教えたら飲まなくてなぁ」


淡々と話しながら手元の用紙を見ながらまた一つ、葉が入った瓶を移動させる。


「勿体ないだろ」



「……とばっちりだぁ…」



隊長の言葉にガックリと、エーリルは頭を垂れた。
元気に戻るの為に薬を飲んだのに、余計元気がなくなった。
ナイレンは彼女を他所に不透明な瓶を寄せる。


(……?)


こっちはこんな状態だというのにあっさりと――。さっきから何をしているのかちょっとだけ気になってエーリルは顔を上げてみた。
しかし注意深く見ても、大まかな事しか判らずサッパリ不明だ。





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