[携帯モード] [URL送信]
想い、そして行動










「はぁ〜……」


何でこんな時に部室掃除なんだ。
……ここの部室無駄にでかいからな。
部活終わってから始めると夜になっちまう。
だから仕方なく部活の時間から始めてんだが……。
こんなことなら式出れば良かった。
…なんて思ってない。
サボってなければ日向に逢えてなかったしな。


「まぁ、しょうがねえか」


とりあえず机とか拭いておけばいいだろ。







ぽかぽかと日差しが暖かい。
そんな中、未胡はベンチに座って部活の様子を見ていた。
すると、休憩になったのかコートから向日と忍足が出てきた。
跡部は後輩に指示を出している。


「日向ー!見てた?俺のプレー!」
「あ、うん。向日くん凄いんだね、あんなに高く跳べるなんて」
「そーだろー?」


凄いと言われて嬉しいのか、にこっと笑って少し頬を赤くする向日。


「岳人のやつ、お嬢ちゃんが居るからって、いつも以上に張り切っとんのやで?」
「ふふ、向日くんらしい」


口に手を当てて、くすくすと笑う未胡。
だが、あることに気づいたらしく、はっと二人を見る。


「あの……宍戸くんは?」
「え?宍戸?」
「宍戸なら部室掃除やで、お嬢ちゃん」
「え……」
「あぁ、式に出なかったからだろ?」
「………」
「何や?気になるん?」
「……うん」


未胡の反応に二人は一瞬目を丸くする。


「だって…あの時、私が宍戸くんも式に連れて行ったら……」
「あ…あぁ、そういう意味か……」


納得したように忍足が胸を撫で下ろす。


「私……部室に行ってくる」
「え?でもよ、跡部が……」
「…お願い、景吾に伝えてくれる?」
「……ああ、ええで。跡部には俺が言うといたる」
「侑士……」
「ありがとう」


一言だけ言って、未胡は部室に向かった。


「いいのかよ?」
「ええんや。跡部かて判ってくれるやろ」
「?」
「ほな、跡部んとこ行こか」
「お、おう」


二人はコートに戻りがてら跡部に伝えることにした。







「……ったく、一応机は拭いたが……」


床が汚えな。
……掃除機かけるか。
そう思ってると、ドアが開いたのが背後の気配から判った。


「跡部か?掃除ならちゃんとやって……」


振り返ってみると、そこに居るのは跡部じゃない。
日向だった。


「あ…日向!?何で部室に……」
「……部室掃除してるんでしょう?私も手伝うよ」
「え?でも、これは俺の仕事で……」
「昨日、私も宍戸くんを引きとめられなかったから。同罪だよ」


にこりと笑って、部室の隅のロッカーから掃除機を出す。
……つか掃除機、んなとこに入ってたのか。


「でも、サボったのは俺の意思だぜ?日向は関係ないっていうか……。それに、跡部だって…」
「景吾には忍足くんたちが話してくれるから。だから、ね」


お願い、と片目を閉じて俺を見つめる日向。
……そんな顔で見んなよっ。
そんな姿を俺が直視できるわけがなく、赤くなった顔を背けるようにした。


「わ、わかったぜ…」
「ありがとう」


そう言うと日向は早速掃除機をかけ始める。
俺は何をすればいいのか分からず、とりあえずもう一回机等を拭くことにした。







「あぁ?未胡が宍戸を手伝いに行っただと?」
「そうや。でも、怒らんといたって。嬢ちゃんも宍戸を哀れに思っただけやで」


そんなこと未胡は言ってません。
でも、大体を察した跡部は軽く息を吐く。


「……まぁ、しょうがねえか。未胡はああいう奴だしな」
「へー、やっぱ日向って良い奴なんだな」
「ったり前だろ?それに、宍戸もサボらねぇか心配だったしな……」
「見張りも兼ねて、か」


忍足は苦笑いだったがとりあえず納得してくれたことにほっとする。


「その事については判ったから、お前らは練習に戻れ」
「おっけー。侑士、行こうぜ」
「わかったわ。おおきにな、跡部」


忍足は礼を言い、向日についていった。







「……バーカ。俺は、お前らが思ってる程何も気づいてねえわけじゃねえぜ」


少なくとも、お前らよりは判ってるつもりだ。


「……宍戸のやつも分かりやすいからな」


跡部は一人呟いて、指示を出す準備をした。










想い、そして行動
(動くんやったら、俺らはそれを見守らなあかんからな)








あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!