助言と交錯する気持ち
「しっかし、宍戸が嬢ちゃんと知り合いやったなんてなぁ……」
「クソクソ!宍戸のくせに!」
「……うっせーよ」
日向が一言言った後、不覚にも見惚れてしまった俺はチャイムで我に戻った。
今は忍足たちと3人で教室に向かってる。
「なー、何で知り合ったんだよ」
「……さっき日向も言ってたじゃねーかよ」
「宍戸がどないなアタックしたいか詳しゅー知りたいねん」
忍足が何とも怪しい笑みを浮かべて俺に寄る。
……鬱陶しい。
「嫌だ。っつか、これから授業だろ?んな暇ねーよ」
「なら、サボればええやん」
その言葉と同時に忍足が目の前を指差す。
……ここは、屋上に向かう階段だ。
「!?いつの間にこんな所に…」
「あははっ!宍戸がぼけーって歩いてたからだろ」
「結構あの嬢ちゃんのこと本気になったんちゃう?」
「っちげーよ!」
何だかんだ否定しても二人は聞き入れず強引に俺を屋上へと案内した。
「ふーん。なら、始業式が始まる前にあの子と話したのかよ」
「……そーゆーことだ」
結局説明しちまった。
ったく……俺と日向の出逢いの話を聞いて何になんだよ。
「俺等より早よ会っとるやん。なのに、噂の彼女≠ェ誰か判らんかったん?」
「当たり前だろ。転校生とか知らなかったし」
「で、恋に落ちたってわけだな?」
「はっ?ちょっ、何決め付けてんだよ!」
「あかんて岳人。相手は宍戸やで?」
面白そうに言っても説得力なんてさらさらねーよ。
っつかどういう意味だ。
「それもそうだな」
「てめーも納得すんな!」
こいつら……今更だがむかつく。
「そんな誤魔化したって無駄やで?嬢ちゃんによろしゅー言われた時見惚れてたくせに」
「なっ……」
見てたのか!?
「誰でも気付くっちゅーねん」
「そーだそーだ」
………。
忍足だけじゃなく岳人までかよ。
何か…ショックだな。
「なぁ、宍戸」
「……なんだよ」
「俺等が宍戸の恋応援したろか?」
「はああっ!?」
まだ好きと決まったわけじゃねーし!
っつかお前等も日向の事気に入ってたじゃねーか!
「いややなぁ、あの宍戸が恋やで?」
さっきから気になってたが、お前の想像している俺≠ヘ何なんだ。
「なら逆に聞くけど、小学生の頃、いや、中学生になって恋したことあるか?」
「………」
俺は少し考えてみる。
……ねえな。
「俺だって恋したことあるけどよ、宍戸が恋したって話は聞かねーもん」
「俺も同じや。宍戸の事好きゆー子は居るけどな」
忍足がしみじみと言う。
その話も初耳だけどな。
「初恋にも等しい宍戸の恋や。応援するのも面白そうやもん」
「面白がるなよ」
結局お前らにとっても暇つぶしじゃねーかよ。
「でも、丁度いいじゃん。跡部の知り合いだし、俺等だって結構簡単に会いに行けるようになったじゃん」
……まぁ、そうだけどな。
跡部が知り合いだから………って、ちょっと待てよ。
「跡部と日向って、知り合いなだけなのか?」
「あ、それなんやけど、二人は幼馴染らしいで?」
「え、それマジ?」
岳人が目を丸くして言う。
「よく跡部みたいになんなかったな……」
「そこは心配せんでええやろ。生まれつきの性格ってもんがあるやろ?」
「あ、そっか」
また納得してやがる。
…まぁ、俺も否定はできねーけどな。
あいつは色々と強烈なやつだし。
「まぁ、跡部はあの嬢ちゃんのこと好きかは別として、とりあえず宍戸…自分の気持ちをはっきりさせや」
「………」
最後の方だけまともな事を言ったな。
……そんなの、まだわかんねーよ。
この、ふと日向の事を考えちまう気持ちが…。
恋なのか、単なる興味なのかなんて……。
助言と交錯する気持ち
(なんか知らねーけど…あいつの笑顔が脳裏にふと浮かぶんだよ……)
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