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新たな関係の公開










教室に戻ると、今昼休みが終わった頃だった。


「あっ宍戸!お前午前ずっとサボっただろ!」
「……うっせーな。仕方ねーだろ?」
「どうせまた屋上でジロー辺りに捕まったんやろ」


何で判るんだ。
……と言いたいとこだが、今日みたいな事はよくあることだった。
俺とジローが幼馴染ってのは皆知ってるからな。


「ったくよー…ほんと、ずりーよな」
「…俺だって好きでサボったんじゃねーからな」


交換条件だ。
これで今日ジローは部活に来るんだからまぁいいだろう。


「そうや、宍戸。昼休みに嬢ちゃん見んかったか?」
「じょうちゃん……?あぁ、日向の事か。見てねぇけど……」
「それがさ、今日も日向の居るクラスに遊びに行ったんだけどさ、居なかったんだよ〜」


岳人が残念そうに肩をすぼめて言った。
居なかった……?


「……跡部は居たのか?」
「跡部は居った。何で嬢ちゃんが居れへんのか聞いてみたら、新しくできた友達に校舎を案内されとったらしいで」
「校舎の案内なら俺たちでもいいのによー…」
「アホ。俺らより女の子の方がええやろ」


気だるそうにしてる岳人の頭を少しこづく。
岳人は怒ったように少し膨れた。


「そういう顔しても可愛い言うんは女の子だけやで。早よ自分の席につき」
「ちぇー」


岳人は渋々席に戻った。
俺も席に戻ると、そのすぐ後に教科担任の教師が入ってきた。
ギリギリセーフってやつだな。

そしてすぐ午後の授業が始まったのはいいが、俺は全く授業に身が入らなかった。
……いつものことだけどよ。
頭ん中にあの歌がループする。
くそっ……ジローの所為だ。
指が自然とリズムを刻んでしまうのに気付き、一人でそっと苦笑していた。







「ほな部活行こか〜」


午後の授業も流れるように過ぎていき、忍足が伸びをしながら俺に寄ってきた。


「今日も日向来るらしいぜ」
「……そりゃそうだろうな」


あの跡部だし、日向だし。
昨日の調子だったら今日も来ると何となくだが思っていた。


「ほんまは迎えにいきたいとこやけど、あんま目立たせたらあかんもんな」


ああ、それは確かにな。
俺はともかく、跡部や忍足が揃ったらどうなるか……。
移動するだけで様々な女子に声をかけられる二人だぜ?
俺は見るだけで脱力する。
跡部はそんなことないが、忍足は一人一人に笑顔を向ける……。
口ではそんなに言わないが、すっげえ疲れそうだ。


「何ぼーっとしとるん?置いてくで?」
「わーったよ」


俺は鞄を持って先を歩く二人の後をついていった。
……途中で担任の小林に会わなければスムーズに部活に向かえたのに。






「ったくもー!何なんだよ小林ー!」


呼ばれたと思ったら資料を運ぶのを手伝ってくれと言われた。
職員室にある資料を運ぶらしいが、その量を見て俺達3人は絶句した。
……何なんだこの量は。
呆れるくらいだった。
部活を理由に断ろうとしたら、「お前ら力有り余ってるだろ?こういう時に使え」と有無を言わさず資料を俺たちに渡してきた。
文句を言っても聞きゃあしねえ。
……くそ、やっぱり苦手だぜ。
おかげで30分くらい遅れてしまった。


「俺らを何やと思っとるんや……」


忍足も流石に職員室と生徒会室の往復は疲れたらしく、脱力していた。
資料も重かったしな。


「っつか俺昨日からこんな目ばっか……」


ろくに部活やってねーじゃん!
3年になってから良いことがひとつもねぇ……。
………。
いや、訂正。
良いことはひとつあったな。
……日向に、出逢えた事。

………って、何言ってんだ俺は!!


「宍戸、さっきから百面相だぜ?」
「……な、何でもねえよ」


岳人が首を傾げながら聞いてきたが、素直に気持ちを言えるわけがなく適当に答えた。
しばらくそんな会話をしていた。
そしてようやくコート付近に着くと、


「未胡ー!今の見た見たー?」
「見たよ、ジロー」


覚醒してはしゃいでいるジローと、それを見て微笑んでいる日向の姿が見えた。
……って、どういうことだ?
俺達はしばらく呆気に取られたようにその様子を見ていた。


「ようやく来たか。遅い」
「あ、跡部……」
「すまんなぁ。担任に呼ばれてん」


忍足がいつもの笑顔でさらっと跡部の視線から逃れると、さっきの二人に近づく。


「あ、忍足くん。お昼はごめんね、折角来てくれたのに」
「ああ、そんなことはええんや。それにしても、何でそんなにジローと仲がええん?」


早速疑問をぶつける忍足。
俺と岳人も跡部に一言言ってからそっちに向かった。


「えっと……何て言えばいいんだろ」


日向は少し言葉を探す。
すると、横に居るジローが笑顔で告げた。


「俺さ、未胡と会ったことがあるんだC〜」
「マジかよ!くそくそジローのくせに!っつかそんな事聞いてねーぞ!」
「うん、だって俺もさっき気付いたもん」


飄々と言うジローに俺たちは何とも言えなかった。


「……ジロー…、お前な……」
「どーしたの?宍戸」


俺の様子を見て首を傾げるジローに、何でもねぇ、とだけ言った。
ジローはまだクエスチョンマークを浮かべていたけどな。


「私、小さい頃にジローと会ったのを思い出して……それで、さっき懐かしいって話をしていたところなの」
「へー、そうやったんや……。ってことは、幼馴染、みたいなもんか?」
「さぁ……。会ったのはその頃だけだから……」


跡部とは違うんだな。
なるほど……。
っつか、俺ジローからそんな友達が居るなんて聞いてねぇぞ!


「あはは、そうだっけ〜?」


……とぼけてんな。
まぁいいか。
気まぐれなジローと知り合いってんなら、よりテニス部に溶け込みやすいしな。


「そんなことより、早く着換えて来い。部活終わっちまうぜ」
「あ、やべっ」


跡部の言葉に俺達は急いで部室に向かった。
そこで一番に着替え終わった忍足に急かされながらも俺と岳人はユニフォームに着替えた。










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(ジローのくせに………って、何でこんな悔しいような気持ちになるんだ?)








あきゅろす。
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