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あおいろ










丸井side




「ブン太先輩!ご一緒いいッスかぁ?」


ニコニコした笑顔でやってきたのは手に弁当ぶら下げた赤也だった。


「ああ、いいぜ」


俺は、屋上に行く途中。
今は昼休み。
屋上で弁当食うのが最高だろぃ?


「あ〜、今日はいい天気ッスね〜」
「……主婦かよ、お前は」
「でも、本当にいい天気ッスよ?」


まぁ、何時もと違って雲ひとつ無い晴天だけどな。


「こういう時の弁当が一番美味いッスよね!」


そう言って、弁当まで食っちまいそうな勢いで食べてる。


「はぁ。食意地張ってんな」
「それはブン太先輩だって同じッスよ!」
「はぁ?こういう時はゆっくり食った方が美味いんだよ」
「そう言って、もう菓子にはいってるじゃないッスか」
これも昼飯だ!


と、何時もと変わらず口喧嘩をしていると、校舎から沢山の生徒が出てきた。


「…あ、もう授業始まったみたいッスね」
「あー…今更行っても遅ぇよな」
「じゃあ、サボっちゃいましょ!」


てことで、俺は赤也と授業をサボる事にした。







「昨日の部活、仁王先輩サボったッスよね〜」
「ああ。ったく、どこ行ったんだか」


他愛の無い話を赤也としてる時、ふと運動場に目を向けてみた。


「……あ」
「どうしたんスか?……あれ、ブン太先輩のクラスなんスか?」
「ああ」


ウチのクラスの女子たちが、体育でマラソンをしていた。


「……あ。あの人、早いッスね」


赤也が指差したのは、マラソンでトップを走ってる女。


「走ってる姿が綺麗……」


俺たちの視線の先の女は、
長い髪を上で束ねて
一定のスピードで
どんどん差を広げて走っている。


「……あんまり、見るんじゃねぇよ」


その姿を、赤也が見ていると思うと、何だか悔しい。
俺は、赤也の視界を手で覆った。


「わわ!ちょっ、何するんスか!」


赤也は俺の手を掴む。


「……あー!もしかして、あの人の事……」


赤也が気付いたように声を上げる。
俺は、続きを言わせないようにと赤也にタックルを食らわした。


「いてて……」


どうやら俺の一発が効いたらしく、少しおとなしくなった。


「………………………図星なんスね」
もう一発殴ってやろうか?
「え、遠慮するッス……」


ったく……。


「…でも、本当に綺麗ッスね」
「………」
「……ブン太先輩、あの人の事好きなんスよね?」
「……ああ、そーだよ」


赤也がしつこく聞くから、ぶっきらぼうに言った。


「………俺、協力しましょうか?」
「……はぁ?」
「だから、ブン太先輩の片思い、俺が手伝うッス!」
「お前、何気に片思いを強調したな」


いつもながら失礼な奴だな。
本当に俺の事先輩だと思ってるのかよぃ……?


「それで、あの人の名前、何て言うんスか?」
「……………夏木璃乃」


俺は、フェンスから璃乃を見ながら呟いた。


「へぇ、璃乃さんって言うんスかー」
「何でお前が名前で呼んでんだよ」
「いやー、これから協力するんスから、俺も親しくなきゃダメっしょ?」


……そうなのか?
関係なくね?


「あ、そうだ!このこと、仁王先輩にも協力してもらったらどうッスか?」
絶対にダメだ


仁王に相談したらからかわれるに決まってるだろぃ…。
なんたって、仁王だからな……。


「そうッスか?同じクラスなんだし、いいじゃないッスか」
「嫌だ。絶対に言うなよぃ?」
「ちぇー。分かったッス」
「余計なこと言ったら英語のテストで赤点とったこと真田にチクるかんな」
「!?それだけは勘弁してくださいよ!」


口止め完了。


「…それにしても、本当に璃乃先輩のことが好きみたいッスね」
「な、何だよいきなり…」
「だって、さっきからチラチラ璃乃先輩のこと見て…」
「……気のせいだろぃ」






今、璃乃が空を見上げた。


俺は、好きなんだ。

この、青い空が。

俺たちを、包んでる。


場所は違うけど

俺たちは今

確かにこの空を、見ているんだ。

雲ひとつ無い空は




青色―――










あおいろ
(この空が無限に続くように、俺の想いも続いてる)








あきゅろす。
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