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うそつき
ボクは王子様だ。この国の王子様。
お父様やお母様には「人の気持ちを分かる人になりなさい」といわれて育ってきた。

だからボクは、ヒトの気持ちをわかってあげれるように、困ってるヒトがいたら寄り添ってあげたい、そう自然と思うようになっていた。

あの日も同じだった。久しぶりに外出許可がでて、はしゃいでいた。そんなときに彼女にあったんだ。
ボクの不注意でぶつかってしまって、ボクは動揺した。
ヒトにケガさせてしまったのではないか、ましてや女の子に、と。

「ダイジョウブ!?ごめん、ごめんね、ケガしてない?」

多分その時のボクは本当に情けない顔をしていたんだろうな。だって、彼女はその翡翠色の目をボクに向けて困ったように笑ったから。
思わず鼓動が早くなった。どくんどくんと、今まで感じたことがないくらいにはやくなって…彼女から目が離せなくなっていた。

「私は大丈夫ですよ。あなたは…王子様、…ルイ様ですよね…?」

うん、にこりと微笑むと彼女も嬉しそうに笑った。
その笑顔はまるで、天使が笑ったかのように思えるくらいふわふわしていて、ボクまで幸せになれるくらい、綺麗だった。
その後ボクたちは一緒に街を歩いて、いろいろ話したんだ。
彼女の名前がアンジュということ。街で暮らしているということ。
幸せすぎて、時間なんて止まってしまえばいいと思っていた。
アンジュと知り合ってからボクは本当に、本当に幸せだった。
アンジュもボクのことを信じてると言ってくれて、愛してると言ってくれて。それだけで幸せだった。

そんなある日アンジュがボクに言った。

「もう会えません」

驚いて、冗談と思いたくて、ボクは必死に引き止めた。いかないで、そばにいてって。
でも、彼女はボクにこう言ったんだ、それは今でもボクの心に刺さっていて、絶対に癒えない傷になってしまった。

「きっとあなたは私といても幸せにはなれません、だからさようなら、あとあなたの事信じてもいなかったし、愛してもいませんでした」

その言葉を聞いた瞬間に、全てが崩れてしまった。
本当にボクはアンジュが大好きで大好きで、愛していたのに。
人を信じることも愛することもやめてしまおう。そう思った。
でも、いつもボクの心は気がついたら彼女を探していて。

「なんて愚かなんだろう」

裏切られても尚人を信じてしまう自分は本当に愚かだ。
信じなければいいのに信じずにはいられない、愛なんていらないといいながら求めてしまう、本当に本当に愚かだ。
もうボクは


「誰も信じてないんだ、そうなんだ」


そう心に言い聞かせることしかできなかった。
自分の心もきっと嘘なんだ。



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