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君は僕の希望



風の巫女を守り、修道女達はその命を失った。
風の巫女を庇い、水の巫女の命は消えた。
魔女ヴィクトリアにより命を消された水の巫女、オリビアは最後の命を振り絞って微笑む。
アニエスの瞳からは枯れるほどに涙の雨が落ちていた。
それでもまだ、オリビアは優しく、優しく、消えそうな声で、笑顔で、アニエスに語りかける。



「オリビア…っ!せっかく会えたのにどうして!?」

「アニエスは泣き虫さんだから、私が、守らなくちゃね」

「オリビア……!」

「水のクリスタルの解放はあなたに任せたわ……」



想いを伝えた水の巫女は、静かにその息を引き取った。
水の巫女の願いを叶えるべくして、クリスタルの解放を行う際もアニエスは、その心に悲しみを抱えていた。
船に乗り込み航海を続ける中もその雰囲気は重いものだった。
ふと、イデアが口を開いた。


「ごめん……私あの魔女のこと、知ってたんだ」

「私のお父様はエタルニア公国軍元帥閣下、六人会議の議長なの」


その言葉がアニエスの心をぐちゃぐちゃに引き裂き、怒りへと変わった。
拳を震えさせ、巫女は声を張り上げた。


「あなたは……、さも自分が何も知らなかったようにしおらしく…!あなたは本当はスパイなのではなくて?」

「やめろアニエス!」

簡単に仲間を疑ってはだめだ、とティズは宥めたが、アニエスの心はもう、闇の中に沈んでいった。


「すみません…っ、少し、ひとりになってきます」

アニエスは怒りをこらえ、泣いていた。







少年は、アニエスの事が心配になり、彼女の元へと向かった。



「どうして、どうして……私だけがいつも取り残されてしまうの、どうして…」


アニエスは肩を震えさせ、泣いていた。
今までの涙が一気に溢れ出しているかのように。
きっと、今まで辛かったことを隠して、心の中で泣いていたんだと思う。
そんなアニエスの横にしゃがむと、涙を拭き、強がるように、アニエスは言葉を発した。


「ひとりにしてくださいと言ったでしょう」

「いや……心配でさ」

「そうやってまたお節介をやくのですね」


そう、お節介。
自分はいつだって、誰かをほうっては置けない。
けれど、アニエスが本当に辛いのにほうって置けというのか?
少年は、強く、そして優しく、少女の手を握りしめた。



「辛かったら、アニエスが辛かったら、その辛さの半分は僕の辛さだから、2人で半分ずつにしたら、辛さも減るでしょ?」

「ティズ……」


アニエスはその温もりに触れ、少しだけ安心したのか、ふわりと笑みを零した。


「アニエス、だから笑って」

「ありがとう、ティズ…でもこれは私の責任だから」

アニエスはしっかりと前を見つめて、歩もうとしている。
なら、自分に出来ることはただ一つ。


「なら、僕は君の為に戦うよ。」


ティズはしっかりとアニエスから目を逸らさずに、しっかりと、答えた。



「君は僕の希望だから」






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ティズアニ
火のクリスタルへ向かう途中です


このときのアニエス辛いだろうね



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