[携帯モード] [URL送信]
雪にさよなら


チュンチュン。
小鳥が朝を告げる様に囀る。
今日は何か違う。
何故か部屋の中がいつもより寒いのだ。
眠い目を擦り、ふぁ〜っと欠伸をした。



窓を開けるとそこには。
一面の雪が降り積もっていた。
実は春の訪れを知らせるかのように暖かい日が続いていたのだが、また冬に逆戻りだ。


「いおりょぎさんいおりょぎさん!」

まだいびきをかきながら眠っているいおりょぎを揺り起こす。

「なんだよ…人が気持ち良く寝てるものを…つか寒!」
ぶるっと震え、いおりょぎは布団に潜った。


「いおりょぎさん!雪さんがまたおはようって降りてきました!」
おはようございます雪さん!とこばとは元気だ。



「ったく…のんきなこった。俺ぁ寒いから今日は部屋にいるからな」
といおりょぎはまた眠りについた。
こばとはいおりょぎさんは寒がりですねとのんきだ。



「そうだ!雪さん見に行きましょう!」
あったかいマフラーに、手袋を纏い、こばとは元気に外へ出た。
アパートの入り口付近に積もってる雪に触れると。
べちゃっと水分を多く含んだ霙だった。



「はぅ!雪さんべちゃべちゃです」
雪を突いていると。
後ろから声が降り懸かる。


「おい。何してんだ。」

「ふ、藤本さん!雪さんべちゃべちゃです!」


あ、おはようございます!と笑うと藤本は溜息をつきながらもおはようとかえしてきた。



「どうして雪さんべちゃべちゃなんでしょう?」
不思議です、と雪を見つめていると、藤本は雪を見つめた後、こう言った。



「これは春が来る証拠だ。暖かくなる前はこういう雪が降るんだ。」
だからこれは春がもう少しで来るってことだ、と藤本は少し笑った。



「じゃあ雪さんこれで最後ですか…」

「まぁそうだな」

「雪さんにさよならですね…」
しょぼんと肩を落としていると藤本は苦笑いしながら呟く。


「今度は春におはようだな」


「あ、そうですね!」




もう少しで雪が溶け、暖かい春がくる。
どんな季節にも別れを告げなければいけない。





「雪さんさよなら、春さんおはようございます!」



春の日差しのようにこばとはとびきりの笑顔で空を見上げていた。



------------------------------


べちゃべちゃの雪嫌い



[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!