まだ空があるならこの手を
んー、と教会で伸びをする。
上を見上げても空なんか見えない。
本当の空はどんなのだろう、とか何色をしているんだろう、とか手が届くのかな、とか。
考えるだけ考えても結局好奇心のほうが勝る。そんな考えを振り払うように深い森の緑のような目を持った少女は自分の頬をぺちぺちと叩いた。
(お花、お世話しよう)
花に近づくとまるでエアリスに『おはよう』と挨拶するようにふわりと揺れた。
この空のないスラム街に、ただ、この教会だけに咲く花たち。
その花たちを見つけてからエアリスは、毎日欠かさず世話を続けて来たのだ。
綺麗に咲いている、けれど、どこにもいけない。
それが自分とどこか被って見えて、どうしても放って置けなくなったのだ。
(この子たちも、やっぱり空の下が、いいのかな)
ふと上を見上げ、そこにあるはずの空を思い浮かべ、目を閉じる。
空の下で、風に吹かれ、自然と一体になって自由に踊る花。
なんて自由で綺麗なのだろう。
そう想像していると、何かが上から落ちてくるようで、上を見上げると天井を突き破り花をクッションにして自分と同じ年だとおもわれる少年が落ちてきた。
もしも〜し、と声をかけても無反応で、心配になり頬を軽くつつくとうめき声をあげた。
(ああ、よかった)
また声をかけてみる。
さっきより大きく息を吸い、吐き出した。
「もしも〜し!」
すると少年はゆっくりと目を開け、エアリスを見ると一言。
「天使…か?」
その少年の一言に驚きつつもくすくすと笑いがこみ上げてくる。
天使と言われるのは生まれて初めてだし、なんともおかしい。
天使じゃないよ、と笑うとその少年は青く澄んだ瞳を向け首を傾げた。
「エアリス、だよ」
自己紹介をし、ふわりと笑うと少年は起き上がり、にっと笑みを零した。
その笑顔はまるで見たことのない空の真上でどんな雲も羽飛ばすような太陽、と言っても過言ではない、そんな笑顔だった。
「俺はザックス。よろしくな。」
「うん、よろしく、ね」
ふと動きだしたザックスの足元を見、エアリスは声をあげた。
「お花!」
「あっご、ごめん」
ひょい、と身軽に花壇を飛び越え着地したザックスは申し訳なさそうに花壇直すか?と聞いて来たが、花たちが私に語りかけて来たのでいい、と一言上げるとまるでしゅん、と耳を垂らした犬のように近くのベンチにザックスは座った。
その姿がまるで飼い主に待てを言われている犬のようで自然と笑が溢れた。
花壇の整備をしている間もうろうろと落ち着きなくザックスは歩き回っていた。
「よし」
花壇の整備が終わりザックスに報告するとぱぁっと笑顔を輝かせ走り寄ってくる姿はさながら犬と一緒だった。
暫く彼と話すと色々な事を話してくれた。
彼はソルジャーで今は任務中に上から落ちてきたのだという。
そしてデートに誘ってくる浮ついた部分も見せてきた。
ザックスと話していると時間があっという間に過ぎ、自然とずっと話していたいと思った。
彼が新羅に帰るとき、手を振り見送った私はこう思っていた。
(彼の空で咲ける花になりたい)
(この手が届くように)
教会花がまだ見ぬ空に向かって、天を見つめていた。
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ザクエア
久しぶりのザクエアでした
初々しいザクエアが好きです
配布元(だいすき。 )様
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