2.もしかして記憶喪失?
「あんただれ?」
冷たい言葉を言い放ったのは、紛れもなく彼だ。
その言葉を聞き、世界が凍りついたように感じた。
事の始まりは数分前。
あれはいつもの喧嘩の出来事。
いつも通りの些細な喧嘩。
今回の喧嘩はどっちがヤンを愛のフライパンで叩くかだった。(結局セシルがやったけど)
どっちも引く気がなく言い合いに発展。
「エッジなんてただ叩きたかっただけでしょ!」
「そんなことねぇって!仲間の身を案じてだな」
「何言ってんのよ!だったらなんであんなに振りかぶってたのよ!」
そう、エッジはまるでゴルフでもするかのように振りかぶっていた。
「そ、それはだな…」
「エッジなんてこのフライパンでその悪い頭直しなさいよ!」
「へっ、出来るもんならな!」
「言ったわね…」
「ちょ、ま、リディ…アーッ!」
ガンっ!
そして現在。
「あんただれ?」
目の前の銀髪の王子様はまるで自分を初めてみたかのような素振りだ。
セシルとローザも驚きが隠せないようだった。
あの脳天気でいつでもリディアの事しか追いかけてないエッジが。
しかも一番大好きなリディアに、だれ?と。
きっとさっきの愛のフライパンが原因なのだろう。それ以外原因はないが。
「あーここどこだ、てかなにこれ妖精?」
これはこれで大人しくていいけれどさすがに調子が狂う。
リディアなんか真っ青に青ざめて今にも泣きそうだ。
自分が原因で記憶を失ってしまったから余計にショックを受けている。
エッジは周りを気にせずうろつき始める始末だ。
「え…エッジ?」
ん?と、振り向いたエッジは今までのようなリディアをみる度に浮かべるあのいたずらな表情はなく、他人に、しかも初めて会った人に呼ばれたときの顔、といっても過言ではない。
「そういやなんで俺の名前知ってるんだ、可愛いお嬢さん、暇なら俺とお茶するか?」
きっと他の女の子に声をかけるときもこんな事いってるんだろうな、と思うようなセリフ。
正直エッジにこんなこと言われるとは思わなかった分、鳥肌がたつ。
にこっ、と今まで見たことのない笑顔がさらに場を混乱に陥れる。
(え、なにこれエッジなの…?)
(あれ…僕の仲間にこんなやついたっけ…いやきっとうん、いない)
(こわい!なにこの笑顔)
それぞれに思う事は大体一緒だった。
そんな仲間を尻目にエッジはぼーっとしている。
これはこれでいいのか悪いのか。
三人がフリーズしてる間に記憶を無くした王子様はふらっと歩き出した。
「ここなんもねーなもう出るわ」
ふと、歩き出すエッジにリディアは胸の痛みを感じた。
このまま行かせてしまったら、もう二度と、彼のいたずらな顔を見れなくなってしまうと、そうどこかで思った。
そう考えたら足が勝手に進んで、腕が勝手に彼を抱きしめていた。
「エッジ…行かないで!」
エッジは驚き目を見開き自分を抱きしめる少女を見つめていた。
「ごめんね…私のせいで、そのままのエッジが好きだから、思い出して」
リディアの瞳からは涙がぽろぽろと零れていた。
ぐすぐす、と泣くリディアの頭に優しく手が置かれた。
「あー…また泣かせちまったか、ちっとやりすぎたかごめんな」
顔を上げると、申しわけなさそうに笑うエッジがいた。
エッジは瞳から落ちる雫を拭き取り、頭を撫でる。
その顔はいつもと変わらなくて。
リディアは嬉しくなり更にぎゅうっと抱きついた。
「よかった!思い出したのね!」
「いや…つーかずっと忘れたふりしてただけだ」
セシルとローザは武器を構え、顔がとても怖いものになっていた。
リディアは笑っていた顔を変え、怒り始めた。
「ば、ばか!心配したのに」
「ごめんごめん、俺がこういう反応したらどーするかみたかったからよ、でも可愛かったぜ、素直で」
この言葉に顔をゆでだこのように顔を赤くしたリディアは俯き、ばか、というだけだった。
(でも、よかった)
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お題『もしかして記憶喪失?』でした
エジリディ
このあとエッジはセシロザにしめられましt
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