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自由な小鳥、鳥籠の中の小鳥
※学園パロガーネットが王女じゃなくてお嬢様


「行ってきます」

広い豪邸に少女の声が響きわたる。
少女はこの自分を縛り付けるものが嫌いだった。
お嬢様としての振る舞い、召し使い達が全てしてくれる生活。
外へ出るのは学校に行くときやパーティーだのなんだの、くだらない集まりのときくらい。
しかも、ほとんど車での移動。
少女はこの生活にうんざりしていた。



「わたくしだって自由に暮らせたら…」
ふと、外をみると、金髪の少年が歩いていた。
同じ学園の制服。
たしか、隣のクラスの。
普段は気にも止めていなかったのに、その時は輝いてみえた。

(わたくしも、あんなふうに、自分の足で自由に…)



学園につくと、いつも声をかけてくれるユウナという少女が微笑んだ。

「おはよう」

「おはようございます」

同じクラスなので行き先は一緒だ。
ユウナと会話をしながら歩いてると、後ろから少年が走ってくる。

「はよーッス!だーっれだ」

後ろから抱きつき、にへ、とまるでその姿は飼い主を見つけた子犬のようだった。
多分しっぽがあれば大きく振っているのだろうと、誰がみても分かる。
ユウナは照れたように笑い、彼の名前を呼ぶ。

「おはよう、ティーダ」

「流石ッスね、ユウナ」

この二人を見ていると、自分がここにいてはいけないのだと分かる。
雰囲気が既に二人の世界だ。
そんな二人を気遣い教室に入る。
自分の席につくと、はぁ、と溜め息が漏れた。



「わたくしも、あんなふうに誰かを好きになってみたいですわ…」


きっとお母様に決められた相手としか、そのような事が出来ないのだと考えると余計に溜め息がでる。
ふと、窓ガラスをノックする音が聞こえ、ちら、とみるとそこには、あの金髪の少年がいた。
窓をあけると、少年がほほえむ。



「お嬢さん、あんま溜め息ついてると幸せが逃げるぜ?」

「わたくしには幸せなんてもうないわ」

「どうして?」

「わたくしには決められた道しか歩けないもの」

ふと、少年が少女の手をとり、窓の外へ連れ出す。
ここは4階。高さは相当なもので、自然と身体が震える。
そこ少年は高さをものともせず、ガーネットをお姫様抱っこすると素早く飛び上がる。
飛び上がるとやはり人間重力にはかなわない。
だがものともせず少年は軽々と地面に降り立つ。


「決められた道なんて歩かなくていい、自分で道作っちまえ!俺も手伝うからさ」

その少年の言葉が、どこまでも真っ直ぐ、ガーネットの心に響く。
今までこんなことを言ってくれる人はいなかった。
お嬢様で、なんでも出来て羨ましいとか、もう将来が決められていていいな、とかそういう言葉しかなかったから。


彼の心がガーネットの心を鳥籠から外へと羽ばたかせてくれる。そんな気がした。


あまりに彼が眩しくて、暫く見つめていた。
しかしそれを現実に引き戻すように授業の始まりのチャイムが鳴る。


「あ、授業が……」

「いいって、たまにはさ、かごの小鳥だって空、飛びたいだろ。だから、サボろうぜ」

「で、でも……」

「気にすんな、ほら行こうぜ!」

少年はガーネットに微笑み歩き出す。
ガーネットはふと、歩みを止め、少年に問う。

「あの名前……まだ聞いてません」

「俺の名前か?俺はー…ジタン」

「わたくしの名前は、ガーネっ…」

「知ってるよ、ガーネットだろ」


驚き、少年を見つめると、小さい頃の思い出がフラッシュバックする。

「わたくしはー…」

「知ってるよ、ガーネットだろ」


この会話、小さい時にも……
どうしても思い出せない。
思い出そうとしているガーネットの手をとり、ジタンは歩き出す。


「ど、どうしてわたくしを連れ出したのですか」

「ガーネットが幸せじゃないなら、幸せにしてやるのが俺の役目だからな」


頬が赤く染まり、顔が熱くなるのを感じた。
(な、なんでわたくしこんなに……)




    
その初めての気持ちと幼い記憶の鳥籠はまだ閉じたまま静かに扉を開く時を待っている。




「ガーネットを幸せにするのが俺の役目だからな」

「ジタンくん…」

「また会えたら、必ず幸せにするから」




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ジタガネ(+ティユウ)



実はガーネットとジタンは幼なじみという設定です

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あきゅろす。
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