BLACK KNIGHT
女王様2

誰もがここで終わると思っただろう。

しかし、七瀬さんが立ち上がったと思うと、
「よそ見しながら歩くからよ。」
相変わらず強い口調で七瀬さんは額を気にしながら、響に詰め寄った。

響は困ったような顔をして、
「えっ。ごめん。」
と呟く。

しかしまだ終わらない。
「おでこ怪我したじゃない。」
とギッと響を睨み付けた。
たしかに顔の怪我はモデルには大変なことだろう。

しかし今時、こんな女の子がいるのかと思うくらい恐ろしい性格である。

正直、男子からかなり評判が悪いのもわかる。
女子には嫌われていないらしいがそれも疑ってしまう程である。

そして響もかなりの言われっぷりに、かなり驚いている。

「聞いてるの?!」
七瀬さんはさらに響に詰め寄った。

「ちょっ!」
響がさすがにイライラして、口を開いた瞬間。

「なあ。」
響と七瀬さんとの間に腕が入った。

奏の腕だ。

「なんで謝らないの?」
目を丸くして、素朴な疑問を七瀬さんにぶつける。

なぜかそれを見て潤はほっとしている。

「だってそっちも悪いでしょ。走ってたのはそっちだし。見ていたみんなが響だけが悪いと思ってない。」
「奏?」
響は眉間にシワを寄せながら不思議そうに奏を見つめた。

一方の七瀬さんはきょとんとして奏を見ている。
「急に何よ。」

「額、特に何もなってないよ。」
奏の顔は特に怒っているというわけでもなく、ただいつもの無関心な顔だ。
「響、長谷。行こう。チャイム鳴っちゃうよ。」

奏は3人に背を向けるなりすたすたと行ってしまった。

「待ってよ!」
響は腰を押さえながら走っていく。
「えっ?えっ!」
それを見て潤はキョロキョロしながら、
「じゃ!」
最後に七瀬さんに会釈して潤も去っていった。


ーーーー


「めい!探したよ!」
めいちゃんこと七瀬芽衣は友人の声に振り返った。

「琴実。」
「あれ?めい、どこか痛いの?」
芽衣はずっと下を向いている。

「私、男子なんか大っ嫌い。嘘つきばっかり。」
「知ってる。
めいもなんであんなにイガイガしてるの?」

琴実は唯一の同じ私学の女子中学出身である。
「女子には普通でしょ。
それに。みんながみんな、あいつみたいな男子じゃないよ。」
琴実は静かに呟く。

「わかってる。わかってるけど。」

芽衣はうつむいた。


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