世界の姿
「ブオオオオオン」
地響きのような音でアシェルは起きた。

(また寝ていたのか。)
重たいからだを起こして、アシェルはんーっとのびをする。
「ブオオオオオオン」
地響きのような音の正体は、金の鯨バルムンクの鳴き声であった。
まだ薄暗く、周りを見回すとまだみんな横になって眠っている。
しかし、ヴァンクールとキセキ、サギリは座って眠っていた。
これは緊張感の差からだろうか。
『うかつに近づくと攻撃されそうだね。』
フレイルが隣で静かに呟いた。
きっとそうだろう。

「あ。アシェルおはよう。フレイルも。」
もうすっかり聞きなれた優しい声にアシェルは振り返る。
「ランス王子……。」
『おはようございます。』
はじめはカストレの王子と聞いただけで殺意がわいたほどなのに今は何ともない。
「ランスでいいよ。
もうすぐクレール島だ。
みんなを起こしてくれるかい?」
ランスはアシェルの隣を通り過ぎ眠っているみんなの元へ向かった。

座って眠っていたサギリとキセキはアシェルとランスの会話で目を覚まし、シエルとランナ、ヒロは起こされて素直に目を覚ましたが。
ヴァンクール……みんな知っている通りやっかいである。
シエル以外が起こすのは命の危険すら感じるので、ここはシエルにおとなしく任せるとする。

バンッ!!!
だれもが目をつぶるようないい音。
「おはよう。」
頬を赤く染めてヴァンクールは目をこすった。

その時
「みんなおはよう。よく眠れたかい?
ほら。あれがクレール島だよ。」
ランスが優しい顔で小さな点を指さした。

どんどん近づいてくるクレール島はアシェルの予想の遥
かななめ上を行っていた。
『世界の機関なんだからもっと立派なんだと思っていたよ〜。』
フレイルはいつものおちゃらけた笑みで子供みたいに笑う。
(ああ。俺もだ。)
クレール島の上に乗っかっていたのは人ひとり住めるほどの小さな小さな家だけなのだ。
「ほんとちいせえな。これ全員はいんのかよ。」
キセキが皮肉を言って笑った。
近づけば近づくほどに、孤島の小ささを実感する。
バルムンクが大きすぎるからかもしれない。

しかしクレール島まであと少しという瞬間アシェルは自分の目を疑った。
ざわついていた金鯨の上が静かになったので、みんな同じようになっていたのかもしれない。

「ああ。これがこの世界だ。」

キセキが潮風に髪をなびかせながらつぶやいた。

「海の向こう……空が続いてる。」
だれが言ったのかはわからなかったが、その通りの景色だった。
クレール島の向こう側、途中で地面は切り取られ滝のように海水が流れおちている。
その向こうに続くのは青々とした空。

これがこの世界。


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あきゅろす。
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