優しい空間

飛行船は一つしかないので、先にアストラシア組を降ろすことになった。


「では、短い間でしたがありがとうございました。」
ヒロは椎葉、時雨、婉那に丁寧に礼をしてから最後に飛行船に乗り込む。
「きっと帰ってきます。」
ヒロがそう言った瞬間にゆっくりと扉がしまっていった。

ーーーー

ドカンッ
茶髪の青年はリビングにあるソファに勢いよく座る。

そして入り口でその様子を固まって見ているアシェルたちに目を向けた。
しかも目をキラキラさせて「早く座れ」といわん顔である。

「じゃあね。」
とランナは操縦室へと向かっていった。

ランナが行った直後、ヒロがソファへと向かったのを見て、自然に全員が動き出した。


「何してんだ?」
ヴァンクールが目を細めてゆっくりとソファに座ると、
「自己紹介やろうぜ!
…女子率少ないけど。」
すると
「おっけ!
じゃああたしからやるよ!」
こういうイベントが好きなシエルが率先して手を挙げる。

「じゃあシエルから時計まわりな。」
サギリが指で示しながら言った。

「うん。
あたしはシエルよ!
ピチピチの16歳!
そしてこのメンバーで数少ない、お、ん、な。」
最後のみ無駄な色気…?をお供させた。
「そして彼氏はいません!」


「うん。」
ヴァンクールがせめてもの優しさなのか、一応返事をする。

「んっんん!」
一度場の空気を持ち直すためにシエルが大きな咳をした。
「次はランナ。
えと、すごく賢いよ!
あと、医者だよ。」
シエルが今席を外しているランナの紹介をすませる。
「次!アシェルはとばして…」
「おいおい!
そのくだり、前もあったよな。」
アシェルが焦りながら突っ込むが、
「じゃあ俺〜。」
とヴァンクールが嬉しそうに手を上げた。

すると軌跡は下を向きながら
「別に男はどうでもいいんだけどね。」
とボソッと呟く。
「いやいや、聞こえてるから。」
ヴァンクールは苦笑いしてから
「ヴァンクール。17歳。猫が好き。」

(単語繋げただけとか、こいつ頭悪いんじゃねえか?)
軌跡はヴァンクールをすごい顔で見ていたので、
「軌跡さん?顔にでてますよ。」

「次は俺ですね。
芳賀寛人です。高校生ですね。ヒロってよんでください」
軌跡はヒロをまじまじと見つめるなり、
「だから制服なのか…。」
と呟いた。

「次は私。鷺だ。
えと…「大丈夫ですよ。俺はあなたのことなら全て知ってます。」


最後にとばされていたアシェルが手を挙げた。
「最後は俺だな。
アシェルだ。
好きなことは料理!以上!」

「…」
アシェルが言い終わったあと、シエルがチラッチラッとヴァンクールとアシェルの顔を行き来している。

「シエルさーん?」
ヴァンクールが目を細めて苦笑いした。

「じゃあ、俺は軌跡だ。
好きなもの…いや好きな人は、俺のことを見守ってくれる女性…。」

「あぁ。よろしく。」
ヴァンクールが冷めた顔でポツリと呟いた。

「まあ、よろしくされるのはサギリ姉さんとこのちびちゃんだけだがな!ふははは!」

船内には軌跡の謎の高笑いが響いた。

ヴァンクールはこの安息できる空間を堪能したのであった。

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