さようなら。
飛行船に乗ってランナは操縦室へ向かった。
ヒロはヴァンクールをソファの上で寝かせ、アシェルはシエルを隣の部屋のベッドに寝かせ、ヒロはランナの方へ向かった。
ゴゴゴ…
音をたてて飛行船は前進する。
アシェルが窓から外を眺めると、緑だった。
「悔しいな。」
アシェルが後ろを振り返るとヴァンクールが立っていた。
「みんなは俺を、命をかけて守ってくれたのに。俺はみんなを守れなかった。」
そしてヴァンクールは目をつぶって窓に手をついてから、額をつけた。
「バレンチアのみんなは俺を太陽の力の生け贄としてなんか見てなくて。
俺を一人の人間として…。」
ヴァンクールは静かに言って、涙を流した。
樹に埋もれたバレンチアがどんどん遠ざかって行く。
アシェルは後ろで手を合わした。
その時、バレンチアがピカッと光った。
そしてたくさんの光が天へ渦を描きながら昇っていく…
「アシェル…?」
ヴァンクールがアシェルの顔を見て驚いた。
「紋章が光ってる…」
アシェルの頬の刺青が絆創膏の上からでも、まばゆく光っている。
「みんな。
アシェル。ありがとう…ありがとう…。」
(俺がセイカを倒すから。)ヴァンクールが静かに決心した瞬間だった。
セイカになんか絶対に殺されない。
もうセイカを倒すのに、太陽の力には頼れなくなった。
(俺がこの手で…)
そして
「さようなら。」
バレンチアが見えなくなった。
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