黒い女


「ヴァンクールは?
…いないの?」
女の人は黒いかみをなびかせながら、少し無愛想にいった。
コツコツッとアシェルの方へ歩いていった。


「ふんっ。
やっぱり騎士の一人か。」そう言ってアシェルが心刀を構えると
女の人は
「ああ!騎士なんかと一緒にするな!」
かなり大声をあげられて、
アシェルはビクッとなって、顔を手で守るようにした。

「違うのか…?
じゃあ、この惨事は…」
シエルが警戒気味にしかも怒りをあらわにしながら低くうなった。


「私以外にこの船に来ているのは確かだが。
樹の力は私じゃないし。さっき来たところだ。」
黒い女はそんなことを言うが、アシェルにはどうも胡散臭く聞こえる。

シエルは下を向いて拳を握りしめた。

「アシェル…。あたし…。」

「シエル。行ってこいよ」
アシェルは眉毛をハの字にしつつも笑った。

「うん。ありがとう。」
シエルはブリッジを出ていった。


シエルはこの惨事をみて完全に冷静さを失っていた。

知らない女の言葉も鵜呑みにしてしまうほどに。

(あの人知ってるか?)
『ううん。知らない。』
フレイルが静かに首をふるので騎士ではないと思う。

「なんでヴァンクールの名前を出した?」
アシェルは目を細めて腕をくんだ。


女はぱちくりしてから
ニヤリと笑った。
「別に、まあ邪魔だからな。」

また太陽か…
「じゃあ通す訳にはいかないな。」
アシェルは静かに心刀をぬいた。


ビュンッ
心刀を前にふりおろす。
「ヴァンクールには近づかせない。」


女は目を細めた。
「なんで、そんなにバカなんだ…
太陽の力は世界を滅ぼす。」


「だったらみんなで守ろうぜー」

女の顔がアシェルを睨み付けてから思い切り走ってきた。



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