生きて、笑顔で、

「誰…?」
シエルが顔を歪ませた。


おじさん?はニコッと笑ってから
「俺様は〜。
通りすがりのおじ様さ」
またはじめの陽気な声で言った。

髪の毛は濃紺で短め、髭が生えている。
「こうみえてすごく金持ちなんだぜ!
まっ。こんなガキに興味はないけどー」

シエルが舌打ちした。
「あんなことを言っておいてー!」
(シエル…
期待してたの…。)
ヒロが苦笑している。



「おい。わざわざお迎えとは、なかなかできるようになったんだな。」
ヴァンクールが冷たい目で男を見て言った。

「ヴァン、知り合い?」
シエルが不思議そうに尋ねた。

「俺に話か?」
シエルの言葉を無視してヴァンクールは男に尋ねた。

「うんうん。ちょっとヴァン君借りてくよ」
男は2回頷いてから3人をみた。

「ちょっと行ってくる。」
ヴァンクールは少し痛そうに席を立ってから男についていった。




※ヴァンクール視点

俺はこの男、『サラバ』について列車の一番後ろの車両の外にでていた。
右半分が痛い…

すると急にサラバが俺の胸ぐらをつかんだ。
「ヴァンクール。誰に向かって口きいてんだ?」

「ハッ!てめえなんかにはこれで十分だろ。」
こいつが俺より"身分"が上なのは知っているが
俺はこいつが嫌いだから。


「太陽の力を持ってるってだけで調子に乗りやがって。」
サラバはふーっと息を吐き頭をかきながら言った。


「んで、話しはなんだよ。どうせいつもと同じだろ。」


「ああ。」

俺はキッとサラバを睨みつける。
「それでアストラシアには何しに行く?」

俺は急に話をそらされて、
「ティアラに…」
包帯ぐるぐるの俺を見てこいつは納得したらしい。
そしてアストラシアのお偉いさんのこいつに頼まないていけないことを言う。

「あと1つ、飛行船を貸してくれ。」
サラバはクスッと笑った。

「バレンチアを見に行くのか?」
こいつ…!

俺は黙ってうなずいた。
「まあ貸してやるよ。」
そういってサラバは俺の頭に手をのせた。

「背が伸びたな。」
何故かゾクッとした。

「やめろ!」
パンッ
俺は無意識にサラバの手をすごい力で叩いていた。

サラバは手を撫でながら俺をみた。睨んでいるような…そうでないような…

「なんでそんなに怯えてるの?」
独特の口調で俺に尋ねた。

知らない間に俺は大量の汗をかき、自分の手首をつかんで荒い息をしていた。

一番驚いたのは…少し涙が出ていることだ。


「危機を感じてるのか?」

俺にサラバは甘い声で尋ねた。
少し呼吸を整えてからサラバを見つめる。
「だったら早く死んでくれよ。アストラシアのみんなが望んでいることなんだけど。」
『こいつ!』
(やっぱりこうくるのか…マリ…大丈夫だよ。)
サラバはうーんと首を傾げて、
「早くしないとセイカに殺されるよ。」

そんなことわかってる。
今はただこいつの話を黙って聞くしかない。


本当に…あと何ヵ月…






俺の脳裏に誰かの甘い笑顔が広がった。

誰だろう。
解らない。

今の俺は10歳からの俺。
それより前の俺は?
…解らない。


俺は10歳より前の記憶がない。
フェアリーさんとアルフしか知らない事実。
俺は記憶喪失者だ。



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あきゅろす。
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