幸福のバラ


カレンは微笑むフェリーチェを抱きしめた。その瞬間、ロズの唸り声は消え、目の前を飛び散る血飛沫が消えた。あたりは一面の青。音は流れる水の音だけ。その中に、海の中にフェリーチェとカレンはいた。
「カレン。いきますよ。わたしはいつでもあなたを見守っています。わたしにはできなかったことをあなたがやり遂げてください。」
フェリーチェはカレンを抱きしめると、ゆっくりとカレンを引き離した。
「わかった。」

カレンが頷いたのを確認すると、フェリーチェはゆっくりと目を開けた。青いまつげの間から、エメラルドグリーンの雫が零れ出した。青い海の中で、反射する光を煌めかせ、エメラルドグリーンのおおきな瞳がカレンのグリーンの瞳に映った。これまで見たことのない宝石のような輝きに息を飲んだ。
「カレン行きなさい!」
フェリーチェが目を煌めかせながらカレンを突き放した。
カレンはハッとして、青の空間をフェリーチェの向く光に向かって走る。気がつくとあたりの青が途切れかかっており、灰色の壁が迫ってきた。カレンはひたすらに光を追い走った。

灰色の壁が光を覆う瞬間にカレンは光に飛び込んだ。

ーーーーーーー

「カレン。あるべき世界を築いてくださいね。」
灰色の空間でフェリーチェは微笑む。

「ロゼッタ。漸く目が覚めました。」
フェリーチェの前にはロズが立っていた。
フェリーチェがにっこり微笑むと、ロズはフェリーチェの前にひざまづき、抱きしめた。
「フェリーチェ。わたしはあなたにこれを渡したかった。」
ロズはフェリーチェの頭に青いバラを刺した。
その瞬間ロズの濃紺の肌や真っ赤な歯が灰色の空間に溶けて消えていく。
「ロゼッタ。あなたを愛しています。」
フェリーチェは濃紺の深い海のような髪を抱きしめた。人の温もりに抱かれフェリーチェは再び深い眠りについた。

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あきゅろす。
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